“死人に口なし戦法”は検察も織り込み済み
安倍派全体では5年間で約5億円の裏金作りがされており、それらが各議員にキックバックされていた。パーティー券収入の過少記載については、まずは事務方である会計責任者の罪が問われることとなる。
ただ、これだけの金額をシステム化して裏金作りに回していただけに、検察は安倍派幹部、とくに派閥実務を担う事務総長から明確な指示があり、共謀で罪に問えるのではないかとにらんでいた。
しかし、事務総長経験者らは事情聴取に対し、キックバックは「会長案件だった」と口を揃えた。つまり、今は亡き安倍氏や細田氏が決めていたとして、自らの責任を否定したのだ。
もちろん、こうした言い訳が出てくるのは検察も織り込み済みだった。そのため、捜査の対象を、安倍氏が亡くなったあとの出来事に絞り込んでいたのだ。
というのも、安倍氏は2022年4月にキックバックの運用に問題があるとして、裏金作りをやめるように指示していたといわれる。だが、同年7月に安倍氏が銃撃事件で亡くなったあと、8月ごろから中止されていた還流が復活していたのだ。
これは、安倍氏に近しかったジャーナリストの岩田明子氏が昨年12月13日の「ABEMA Prime」で明かしているのだが、朝日新聞も同月23日の朝刊で安倍氏が提案した還流取りやめについて具体的に詳報した。
これが事実だとすれば、安部派の事務総長らも「会長案件」という“死人に口なし戦法”で逃げ切ることはできないはずだ。検察は特に復活の議論を主導していたとみられる西村康稔前経産大臣周辺を“本丸”として捜査を進めていたという。