「一言も切らない」発言に大御所激怒も譲らず
「でも、やはりNHKさんから歌詞を削るなりして歌唱時間を縮めてほしいと言われたのですが、私はそこでも『この1年間、フルコーラスで歌わせてくださった他の番組に申し訳が立たないので、たとえ紅白であっても歌詞を削る必要があるのであれば、丁重にお断りさせてください』と事務所に言いました。
11月に行われた紅白の会見で『カットできるところがひとつもない曲なので、紅白でも一言も切らずに歌わせていただきたいと思います』と言ったら、後日、ある大御所歌手さんから『誰の歌もカットするところはない』というご意見もあったと聞きました。
おっしゃることはごもっともだと思います。でも、こればかりは紅白に出られないことになってもどうしても譲ることができなかったのです。結局、歌詞は削らずにイントロや間奏を縮めて、7分50秒にアレンジしました」
注目を浴びてのステージということもあってか、2、3度行ったリハではいずれもギター演奏を失敗。「本番でもし失敗してしまったら……」、そんな雑念がよぎるなか、大晦日当日の朝もしっかりとトイレ掃除をして、NHKホールへと向かった。
「リハではあんなに間違えたのに、本番でひとつも間違わなかったのは、おばあちゃんが見守っていてくれたからかな。本番では生の氷川きよしさんにご挨拶できたこと、一番好きな『虹色のバイヨン』を生で聴けたことは本当にうれしかったです。舞台裏で振り付けを真似してたのも今ではいい思い出です」
そんな植村は2016年から家族とともにニュークに移住し、今年11月に第二子を出産した。授乳に追われながらも、日々の幸せをかみしめているという。現在、音楽活動のほうは?
「今年は妊娠中にも日本でいくつかライブをしたり、神戸新聞さんでもコラム連載が始まり、来年3月には産後初のツアーも予定していて、変わらず活動を続けています。
『トイレの神様』以降は、等身大の自分の歌作りを心がけています。今後、子どもが大きくなるにつれ、私の見える景色もまた変わるでしょう。そんな目に映る世界の変化や内なる気持ちの動きに敏感になりながら、私は私の歌を作り、今後も歌い続けたいと思います」
もちろん、ニューヨークに移っても、トイレをきれいにする習慣は変わっていない。
取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班