ドラフトの隠れた逸材、神速のリードオフマン
■左翼手:『ドラフトキング』より、阿比留一成
※「グランドジャンプ」2018年24号~連載中(既刊11巻)/クロマツテツロウ
敏腕スカウトマン郷原眼力(ごうはら・オーラ)が独自の審美眼、コネクションを駆使してドラフト戦線に風穴を開けていく『ドラフトキング』。ドラフトといえば「1位指名」にばかり注目されがちなところ、この作品では下位指名選手にスポットを当て、高校の2番手投手や社会人の選手など、これまで野球マンガで主人公になりにくかった選手たちが毎回登場する。その1人が、この阿比留一成だ。
「実際にしっかり取材をされているんだろうな、ということがよく伝わってくる作品。プロに行けるかどうか、そのギリギリのラインの選手の描き方がとても秀逸で、象徴的な選手がこの阿比留です」(ツクイ)
元々は即戦力の遊撃手としてドラフト候補だった阿比留。だが、膝のケガを隠して出場した都市対抗野球で状態が悪化。その年のドラフトで郷原のいる横浜ベイゴールズに6位指名されるも、ケガの影響や指名順位などから入団を拒否。その後、郷原の進言で膝の負担の少ない外野手に転向し、社会人野球で生き続けていくことを決意する。
野球マンガとして光が当たりにくい社会人野球の選手も加えることは、このベストナインに多様性をもたらし、より魅力あふれるものにしてくれるはずだ。
■中堅手:『Mr.FULLSWING』より、兎丸比乃(とまる ぴの)
※「週刊少年ジャンプ」2001年23号~2006年23号連載(全24巻)/鈴木信也
4番打者とともにチームの骨格を決める重要な1番バッター。そこに置きたいのは『週刊少年ジャンプ』が誇る俊足選手、兎丸比乃。野球ゲーム『ファミスタ』シリーズの超俊足選手“ピノ”を連想させるミスフルのリードオフマンを推したい。
「主人公である猿野天国の豪快なフルスイングも魅力ですが、強打者枠はすでに十分にそろっている。打線のつながりとして、俊足の兎丸比乃は1番に置きたいですね」(ツクイ)
ただ単に「足が速い」ことを売りにするキャラクターはどの野球マンガでも1人や2人は存在するが、兎丸比乃の場合、その足をより生かすための必殺技をいくつも持っていることが存在価値を高めている。
たとえば、一塁までの到達時間を稼ぐため、極端なダウンスイングで高いバウンドの打球を狙う「断頭台(ギロチン)」。三段加速の超走塁「T・O・S・VR(テイク・オフ・スピード・ブイアール)」や、四段加速で最後に前方宙返りを加えて捕手を飛び越す「T・O・S・VR・改」などなど。走塁シーンでもしっかり魅せるプレーがあるのもまた、キャラ立ち、という部分で外せない要素だ。