さらに大企業の中には、副業マッチングサービスを単なる仕事を発注する場ではなく「社員が自立できるよう、案件を紹介したり能力開発する場として活用する動きがある」と大類氏は語る。

その一例が、大手広告代理店・電通の取り組みだ。2021年、電通は40歳~60歳のミドルシニア社員が早期退職後に個人事業主として業務委託契約で活躍する新たな働き方の仕組み「ライフシフトプラットフォーム」を発表。その支援の一環で、クラウドリンクスを活用しているのだ。クラウドリンクスは、元電通のミドル世代人材を抱える電通の子会社・ニューホライズンコレクティブと提携し、クラウドリンクス上の案件を紹介する取り組みを行っている。

大企業も”副業”に熱視線。開始2年で登録者2万人を突破した副業マッチングサービスの裏側_3
クラウドリンクス事業紹介資料より抜粋

「大手広告代理店で培ったスキルや経験を生かし、ベンチャーや中小企業の成長に貢献する人材として送り込むことを目的に座組みを構築しました。事業課題に悩む企業側は、優秀な壁打ち相手がジョインすることで効果的な打ち手を考えられますし、元電通の人材も新しいセカンドキャリアの形成につながる。年齢や雇用形態関係なく、その人の持ち味を発揮しながら中長期的に働ける環境づくりをサポートできればと考えています」

大類氏によれば、大企業で行われている社員研修でもクラウドリンクスを活用することがあるという。社内の業務では培うことができないノウハウを学んだり、副業のマッチングを通じて仕事を獲得するスキルを身につけることを目的としているようだ。

1度入社したら副業などせず、社業に打ち込めーー。かつて「勤めれば一生安泰」と言われた大企業でも、そんな常識がいよいよ崩れ去ろうとしているようだ。

「大副業時代」の先にある未来とは?

副業解禁の流れから、働き手となるビジネスパーソンは仕事の選択肢がより広まった。それと同時に、大企業までもが副業を通じて他社の優秀な人材を迎え入れようと手段を尽くす。さらにこの動きに着目した企業が、両者をマッチングさせるプラットフォームを整えて、さらなる変化を促す。

この一連の流れの先には、一体どんな未来が待っているのだろうか。大類氏はサービスの展望も踏まえながら、最後にこのように予想する。

「仕事に対する主導権が企業ではなく、ビジネスパーソンに移っていくと思いますし、そのような未来の実現に向けてサービスを進化させたいと考えています。そのためにも、より多くのビジネスパーソンの方々に登録していただき、より多様な人材を揃えたい。そして、それが実現すると、さらに多くの企業が副業人材を求めてクラウドリンクスを活用します。このサイクルがうまく回れば、ビジネスパーソンが複数の収入源を持つのが当たり前の時代になるでしょう」

加速し続ける「大副業時代」。しかし、これはまだ「序章」に過ぎないのかもしれない。