貯金は正直それなりにある。
連載もしていてアニメ化も決まっている。
そして時計は欲しい…
株。要するに資産運用。それには当然お金がいるし、たくさんあればあるほどいい。そうなると、手持ちのお金を時計に使うか、株に使うかが悩みどころとなる。
仮に株を年利5パーセントで運用できるとするならば1000万円なら50万円。1億円なら500万円増えるわけで。理論上は。それだけ運用できれば株の運用だけで暮らしていけるし、いわゆるFIRE(経済的自由を得た早期リタイア)すら可能と知る。
世の中の金持ちは労働でお金を稼いだらそれを運用することで長期的な利益を得ていたのか(もちろんリスクはあるけど)……とか、よくあるカルチャーショックを受け、自分も資産運用をしなければ、という気持ちが高まっていた。
そして今の自分の状況。今までの連載のおかげで貯金は正直それなりにある。連載もしていてアニメ化も決まっている。そして時計は欲しい。
しかし連載はもちろん楽ではないし、長く続けても今回の連載はおそらく3年程度で完結する予定。その次の連載が当たるかどうかもわからなければ、その連載をする体力がその時にあるかも不明。
手持ちの資金と、これから入る連載の収入を適切に株に変えれば、将来はかなりの確率で安泰と言える状態になれる。
漫画家というのは改めて不安定な仕事だ。
そんな中で株の運用を一定以上の額でできれば、将来の仕事の出来不出来の心配をしなくても済む状態になれるかもしれない。自分の人生において非常に重要な案件だ。合理的に考えれば時計なんて買うお金があるなら資産運用した方が良い。間違いなく良い。完全にわかっている。
この流れ、完全に時計を買う前振りに見えていると思われるでしょう。
…なんとこのイベントの時は、時計を注文しないことに成功してしまったのです!
時計の誘惑に打ち勝った!やはり時計よりも人生の安定の方がどう考えても優先度が高い!これでいいのだ!
自らの欲望に勝利し、気持ちよく会場を去る。人としての成長を感じつつイベントを終えることができた。
しかしこの後に起こることを、まだ僕は何も知らなかった。
文/ヒロユキ 写真/shutterstock
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