利益優先で危険な手術を勧めるクリニック
なぜこのようなことが起こったのか。豊胸手術や豊胸修正手術を得意とする東京美容外科赤坂院の安田康祐院長に聞いた。
「アクアフィリング豊胸手術はアメリカやEU、中国などでは禁止されている手術方法です。注入剤はポリアミドと水を配合した『アクアミド』という成分で構成されているため、ヒアルロン酸よりも体内組織に馴染みやすいといううたい文句で登場しましたが、実際は体内の脂肪や組織を溶かして炎症や化膿を引き起こす危険な成分なのです」
AさんやCさんの体に起こった異常も、この注入剤が原因なのだという。
「Aさんの場合は、おそらく注入したアクアミドが体内の正常組織を破壊して炎症を起こすなどしたことが、痛みや腫れの原因と考えられます。
Cさんの場合はジェルが体内でイミグレーション(転移)を起こし、さらには皮下脂肪まで溶かして体外に噴出したのだと思います」(安田院長)
さらにアクアミドは他臓器への悪影響も。
「Cさんのように体内の正常組織を溶かして体外に噴出するといった危険性以外にも、体内の大胸筋や肋骨を突破して肺にまで達することも十分考えられます。
そうすると、肺炎などを引き起こすほか、アクアミドは発がん性もあるという報告も。最悪の場合は死に至る可能性もあります」(安田院長)
信じられない事態を巻き起こすアクアフィリング豊胸。そもそも、なぜアメリカやEU、中国で禁止されている施術が日本では平然と行われているのか。
「日本では日本形成外科学会など4団体で使用禁止を呼びかけてはいますが、施術をしたところで罰せられることはないからでしょう。
なにより時間がかかり、医師に技術がないと患者さまが納得せずクレームにつながるシリコンバッグ挿入手術に比べ、アクアフィリングやヒアルロン酸といったジェル状充填剤を用いた豊胸術はオペ時間が短く単価も高く、利益率がいい。
しかも研修医上がりの先生でも施術できることから、クリニックはこの施術を勧めがちなのだと思います」(安田院長)