時代の転換期に必要な能力とは

 頭のよさにもいろいろ種類があって、大学受験とか中央省庁の試験は一直線です。司法試験も近いです。基本的には覚えて若干柔軟に運用できればいい程度の能力です。でも、違う賢さもある。例えば釣りがうまいとか、動物と仲よくなれたりするような能力。その能力はほとんど受験と関係ない。官僚であれば一定程度言われたことをやればいいけど、時代の転換期にはその釣りが上手な能力のほうが実は重要だったりするんですね。

つまり、総合的な状況の中でどうやれば魚が来るか、どうしたら釣れるかを判断して見抜く能力。うちのおやじは小学校卒ですけど、むちゃくちゃ漁師に重宝がられていた。魚の居場所が分かるんですよ。当時機械もない時代、うちのおやじは風向きとかいろんなアンテナで、魚がどこを泳いでいるか分かる能力を持っていたんです。

藻谷 つまりそれも頭がよいわけです。一部の基準だけで脳の性能を決めるなんて意味がないですよ。例えば野球だけしかスポーツがなくて、野球ができるやつだけが運動ができるということになったら、陸上が速いだけの人は全員駄目ということになる。そもそもそんな単線基準で頭いいとか悪いとか決めるのは無意味です。

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答えは市民の顔に書いてある!

 コロナのときにそれが見事露呈しましたよ。中央省庁の官僚は全部フリーズして、止まってしまった。何していいかわからないんですよ。でも、プライドだけは高いから、国の指示を待てと言う。私はもう初めから国の指示を待たなかったんです。何をしたかというと、市役所を出て商店街をひたすら歩いて、おやじさんたちの声を聞いた。市長さん、見てよ、がらがらやろ。先月のテナント料も払えてないし、今月も払われへんわ、今日はもう最後やなと……。

藻谷 コロナの真っ最中、商店街は軒並みそんな感じでしたよね。

 そのおやじさんが言うには、テナント料はいいから、市長さん、一個だけお願いあるんや、うちのパートさんな、客ゼロだから休んでもうてんねん、母子家庭やから、そこの子飯が食えてないで。何とかしてあげてや……私、それを聞いて両方何とかしようと思ったんですよ。

それで、すぐ市役所に戻って、幹部全員集めて、これからテナント料払うぞ、明石市が立て替えたる。ひとり親家庭にも金振り込むぞと4月10日に言うて、その後、三井住友と議会に掛け合って臨時市議会開いてもらって、4月24日付でばんばんテナント料振り込んで、5万円支給も国に先んじてやったわけです。

藻谷 いやすごいな。「日本はとにかく何でも遅い」と言われますが、泉さんのように、先んじて行動したリーダーもいるのですよね。

 答えはまちの中にあるし、市民の顔に書いてあるんですよ。商店街のおっさんが答え持ってんねん。中央省庁の官僚は待て待て言うばかりで、国が協力金名目でテナント料振り込んだのは8月9月になってからですよ。テナントのおっさんはそのお金をそのまま明石市に返してくれました。うちはすぐに返す気やったからと感謝されて。国は給付だけで感謝はされてない。時機なんですよ、溺れかけてるのに助けるのが遅過ぎる。今大変だったら今せなあかん。世界はみんな、1週間、10日で振り込んでるんですよ。
 
藻谷 そのとおりです。あのアメリカですら早急に振り込んでましたよ。

泉 そう、日本とアメリカに支店持っているところはみんなびっくりしてた。ほかの国がすぐ振り込めるのに、何で日本だけが半年近くかかるのか。何やっとんねんって話です。もう完全に頭の中が止まっているわけでしょう。コロナで客おれんし、金ないねんから、つなぎ融資せなあかんに決まっとるのに、何でそんなこと分からんのかいな。しつこいけど、中央省庁の官僚は賢いと言われているけど、能力も自信もないし、見えてないと思います。