ライブ会場というサンクチュアリを乱すのが本当のファンのわけがない

さて、それではもし仮に、その日のライブでも痴漢行為が発覚していたらどうなったのだろうか?と想像してみる。
おそらく、多少の揉み合い程度はあっただろうが、実際には“二度とライブに来れない体”になるような私刑は行われず、取り押さえられた痴漢は速やかかつ穏やかに警察に引き渡されたのではないかと思う。

行ったことがある人にはわかるだろうが、ハードコアパンクのライブ会場には常に、何が起きてもおかしくないような、ピリピリした緊張感が漂っていることは間違いない。
だがその実、心から好きな音楽を楽しみたい人たちのためのハッピー空間なので、一皮むけば演者も観客も非常に優しく、平和的だったりするのだ。
バイオレンスムードのピリピリ感は、そういう空気を込みで楽しみたい人たちによる、会場一体となった一種の演出であり、実際に暴力行為が行われるようなことはほとんどあり得ない(皆無とは言わないけど)。
昔からGAUZEのライブに通っている客は、そういうことも十分承知なのだ。

そしてGAUZEの熱心なファンだった一人としてあえて断言するなら、純粋に彼らのライブを楽しみたい客であれば、あのサンクチュアリのようなライブ空間を汚す行為などは決して働かないはずだ。
バンド側もライブハウス側もそのことはわかっていて、演奏中に痴漢するやつは本物のファンではないと踏み、プレッシャーを与えたのだろう。
不定の輩をビビらせるのに十分なほど、素人から見たハードコアのライブ会場は殺伐とした緊迫感に包まれている。
つまり、警告の抑止効果は抜群だったのである。

とても強烈で意義深かったDJ SODAさんの告発

そして現代社会では、ステージに引きずり上げられてタコ殴りにされるよりも、SNSで顔まで晒されることのほうが、よほど大きなダメージとなる。
するとDJ SODAさんの今回の告発はとても強烈で、また意義深いことだったのではないだろうか。

拡散したDJ SODAさんの投稿には、多くの同情や加害者糾弾の声が届く一方、彼女の当時の服装や、客を煽るためにみずから手の届く範囲に近づいた行為を責める投稿も相次いでいるという。
どうもDJ SODAさんという人は、過去の奔放な言動や服装によって、セクシーさを売りにするお騒がせセレブと見なされる向きもあり、さまざまな議論を呼び起こしているようなのだ。

だけど、そんなことも一切関係ない。
セクシーを売りにするパフォーマーなのだから触られても文句を言うなというのは、あまりにも子供じみた物言いだ。
「誘うような露出の多い服を着ていたのだから自業自得」なんて、いったい何時代の人間の言い草なのだろう。
また、もみくちゃのライブ会場をいつも体験している身から言わせてもらうと、いくらモッシュピットで後ろから激しく押されたとしても、自分の手の先をコントロールできなくなるということもあり得ないのだ。

このニュースに対し、SNSやコメ欄でDJ SODAさんを誹謗中傷している人って、きっと全員が痴漢候補生なんじゃないかなと思ったりする。

あー、キモいキモい(あくまで個人的見解です)。


写真・文/佐藤誠二朗