原作要素を残しつつもリアリティのある
デザインにした“聖衣(クロス)”

――今回はハリウッドで活躍する凄腕スタッフが集結して制作に臨まれたわけですが、どういったスタッフを集めたのでしょうか。

監督を務めたポーランド出身の映画監督トメック・バギンスキーは、小説原作でゲーム化して人気を博した「ウィッチャー」という作品を、2019年にNetflixでドラマ化した際に製作総指揮を務めるなど、実写化企画には馴染みがあります。以前から交流があったのですが、あるときこのプロジェクトについて話してみたところ、「『聖闘士星矢』は有名な作品だし知っているよ!」と意気投合し、参加してくれました。

――バトル漫画の金字塔として、本作のアクション演出には多くのファンが関心を寄せていると思います。原作のアクションを実写でどう表現されたのでしょう。

当初は、CGをメインにしたド派手なアクション路線でいく案も出たのですが、近年は大規模な予算をかけたCG主体の作品も多く、お客さんの目も肥えているので、一歩間違えると受け入れてもらえない危険性もありました。ですから本作は生身のアクション要素をメインに据えることにしたんです。

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生身にこだわったという格闘アクションは必見!

格闘系アクション映画は、アクション演出のカギを握るアクション・コーディネーターの仕事ぶりで作品の出来が左右されます。なので、カンフー映画要素をギュッと詰め込み大ヒットを記録した2021年のマーベル映画「シャン・チー/テン・リングスの伝説」で迫力の肉体派アクション振りつけをした、アンディ・チャンに協力を仰ぎました。

子供の頃から原作のファンだったというアンディはノリノリで引き受けてくれましたね。私も撮影現場に赴いて、彼の振りつけしたアクションを生で見ましたが、圧倒されました。そこに、カメラアングルやCG・効果音などの演出が加わることで、より見事なアクションシーンに仕上がりましたので、アクション映画ファンにもぜひ本作を鑑賞してもらいたいです。

――そのほか、こだわった部分を伺いたいです。

シリーズを語るうえで欠かせない存在である“聖衣(クロス)”のデザインですね。聖衣は、聖闘士(セイント)の証として与えられる防具です。車田先生によるインパクト抜群のデザインがシリーズを個性的なものにしていますし、原作人気の大きな要素になっています。

最初はCGを駆使して、漫画やアニメで描かれたままのデザインを考案してみたのですが、どうにもコスプレに見えてしまい、実写の世界観と並べてみると浮いてしまったのです。そのため今回は実際の衣装として製作し、“肉体派のアクション要素をメインにする”という作品コンセプトに合わせ、役者がアクション時に動きやすいように、原作要素を残しつつもリアリティのあるデザインにしました。

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原作要素を生かしつつ映画になじむようにリデザインされた聖衣(クロス)にも注目だ