こたつ記事はエンタメかフェイクか
こたつ記事の調査・分析の結果から、現在のメディアが置かれている状況について、学生はどう感じているのだろうか。
合田さんは「こたつ記事は実際には取材していないはずなのに、よくここまで書けるなと感じました。逆にすごいなと、エンタメの気分で読むようになりましたね」と語り、次のように続けた。
「(真偽が)怪しいなと思う記事は、そのまま面白いなと思って終わればいい。現地で取材して書いているのかわからないスポーツ記事も、それはそれで大熱狂したんだなとすませてしまう自分がいます。
本当に取材しないと書けないことは信じて、怪しいものはそのままエンタメとしてスルーすれば、あまり深く考えなくても楽しんでいけるのかなと思いました」
一方、中野さんは、情報の送り手である記者すらも真偽がわからないという状態に危機感を抱いている。
「こたつ記事を書いている記者も正しい情報なのかわからないまま発信されているということは、受け手である私たちはなおさらどのように判断したらよいかわからないですよね。
このままの状態を一刻も早くなくしていかなければ、受け手がほしい情報にたどり着くことができなくなるのではと思ってしまいます」
新聞記者などを経て現職に就いた藤代教授は、学生たちのニュースの見方を新鮮に感じたそうだ。
「こたつ記事はフェイクニュースの原因になりうるものですが、面白いし、ついつい見てしまうものでもある。そんな学生たちの率直な意見にうならされた研究になりました。
重要なのは、正しい情報を見極めて、真偽不明の情報で溢れたネットの海でおぼれないこと。そのための力がますます重要になっています」
後編では、フェイクニュースが社会やマスコミに及ぼした影響について、藤代教授が語る。
取材・文/堤 美佳子
撮影/松本 侑
編集/一ノ瀬 伸