日本にはない長身投手向けのノウハウ
たとえば藤浪なら今季、どんな目標を立て、そのためになにが足りないと自覚しているかを本人からヒアリングし、それをコーチたちと共有するのだという。メジャーで先発し、1シーズン投げ続けることが目標だとすれば、それに見合う体力が備わっているか、不足しているのはどの筋力か、そうした課題をトレーニングコーチが提案する。
「技術面でも、例えばスライダーの回転数をメジャー平均より上げたいとするなら、メカニック(運動機能)をどう変えていくべきかを投手コーチと対話する中で模索していく。メジャーではまず選手が目的を明確化し、コーチがそれをサポートする形を取っています。決してコーチから命じたりはしません」
同スカウトがもうひとつ、藤波覚醒の追い風になると見ているのが、日本にはない長身投手向けのトレーニングのノウハウだ。
「日本では現状、身長190㎝以上の投手のトレーニングノウハウが十分に蓄積されているとはいえません。投手コーチにしても、高身長の投手のメカニズムに精通した人はそれほど多くはない。しかしこちらでは、球団を問わず多くのノウハウが蓄積されているので、藤浪の求めに対して、より適切なアドバイスが可能となるわけです」
そしてその利点は「コーチの経験だけに頼らない客観的なもの」でもあるという。
「日本ではコーチが代われば指導方法も変わることがあると聞きます。でもメジャーにはそれはありません。それぞれのチームに一貫したノウハウがあるため、ある選手がいつ入団しても、どのコーチだったとしても、指導方法は変わらないということです」