朝8時の渋谷に作業着で現れた元合コン芸人
1月某日、東京・渋谷の文化村通り。時刻は午前8時。平日ということもあって街は出勤を急ぐ会社員が目立つが、曜日感覚にとらわれない朝帰りの若者の姿も散見される。数年前までの“この男”なら、むしろ後者の人間だったかもしれない。
男は、乗りつけた軽バンのダイハツ、ハイゼットカーゴから降りると、おもむろに積載スペースから清掃用具を取り出して、作業の準備にとりかかる。
「昨日の夜ですか? 10時に寝ましたよ。年齢も年齢だから早く寝ないと仕事に響くんです(苦笑)」
そういって、作業服に身を包んだ45歳のカラテカ・入江慎也は笑う。そこには決して自虐的な響きは含まれていない。
株式会社ピカピカ。それが現在、カラテカ入江が経営する会社の屋号。2019年に「闇営業問題」の“主犯”として吉本興業から契約を解消された後、謹慎生活を経て清掃会社「おそうじ本舗」のアルバイトにつき、その1年後に独立して起業したのがこの会社だ。
「1年で独立は早いと思われるかもしれませんが、清掃業界は2週間で独立する人もいるくらい。むしろ1年は長いほうなんですよ」
そう話すと手際よく掃除用具をまとめ、依頼を受けた店舗に運び入れる。
この日の現場は焼肉店「和牛の神様」。焼肉界のカリスマ・森田隼人氏のプロデュースする店舗で、芸人時代の縁から月に1度の定期清掃を依頼されている。