「今までで一番悔しい試合に」

“挑戦者”河辺愛菜が追い求める「トリプルアクセル」という名の翼_1
すべての画像を見る

「(北京五輪は)経験したことのない試合で、何もかもが違って。楽しかったけど、すごく怖い試合でした。不安というか、なんだろ、ずっとそわそわして。自分のジャンプの悪い癖がすべて出てしまったと思います。こういう演技になってしまい、申し訳ないです」

河辺愛菜(17歳)は何とか言葉を紡ぎ出したが、その声は震えていた。感情を制御できないようだった。まるで魔物でも見た後のように。

「アクセルは自信を持っていけたと思うんですが…。一回崩れてしまうと、焦りに変わって、どんどん崩れてしまって。調子自体は悪くなかったんですけど、精神的な弱さが出てしまいました」

代名詞になりつつあったトリプルアクセルも失敗に終わり、まるで翼を失ったかのように見えた。

「今までで一番悔しい試合になってしまいました」

そうして、初めての五輪は終わった。
 
2019年11月、滋賀県立アイスアリーナ。西日本選手権ジュニア、中学3年生だった河辺は桁違いの実力を見せて優勝している。

ショートプログラム(SP)では冒頭、3回転ルッツ+3回転トーループと難易度の高い連続ジャンプでGOE(出来栄え点)も稼ぎ出した。その後のジャンプも、3回転ループ、ダブルアクセルを成功している。

次の日には、フリースケーティング(FS)では冒頭にトリプルアクセルを入れた。当時、伊藤みどり、浅田真央以来、日本人では五輪で成功者がいない大技で、それを習得することは将来的に大きな武器につながるはずだった。

「調子は良かったので、いけると思ったのですが…」
 
惜しくも失敗したが、河辺は意欲的だった。

「アクセル(ジャンプ)は(練習で)近くで跳んでいるのが紀平梨花ちゃんなので。その練習を参考に、自分もこんなジャンプがしたい、と思いながらやっています。トリプルアクセルをちゃんと練習で始めたのは、2019年の5月くらい。

一回、跳べるようになったんですが、また跳べなくなってしまって。膝をケガしてしばらくは練習していなかったんですが。今回の大会前日練習では、3本中3本、成功しました! 

最初は怖かったですが、だんだん怖くなくなってきています。でもシニアのトップ選手を見ていると、もっと確率を上げないといけないなと。練習では絶対に成功できるようにしたいです」