前編〈批判続出のカラオケ仕様は当面続行〉卒業した“鐘のおじさん”こと秋山気清さんが語る「NHKのど自慢」の魅力「私としては全員に合格の鐘を鳴らしたかった」はこちら

判定不服の時のささやかな抗議

「やはり『(NHK)のど自慢』はただの歌番組と違って、一人ひとりの人生に触れるような瞬間が多い。本当に数え切れないくらいの人に出会い、そのエピソードを聞いてきましたので、21年間があっという間に感じました。

『この曲を歌って奥さんと結婚した』『脳梗塞で倒れて復帰してやっとこの曲を歌えるようになった』なんて方もいましたね。だから私はすべての人に合格の鐘を鳴らしたかった」

鐘の鳴らし方は3パターン。合格を意味する「鐘3つ」(ドシラソ ドシラソ ド ミ レの11音からなるお馴染みのメロディ)と、不合格を意味する「鐘2つ」(ド レの2音)、「鐘1つ」(ドのみ)となっているが、決して秋山さんが判定していたわけではない。

「審査室から私のイヤホンに判定の指令がくるので、それに従って叩いていただけです。ただ、『今のが鐘2つ? 鐘3つでしょう』と思うことだって多々ありました。そんな時にはドとレの間を少し空けて、 “カーン・カーン”と叩いてました」

“鐘のおじさん” 秋山気清さんが21年間の「NHKのど自慢」鐘奏者人生を振り返る「前日に彼氏にフラれた女性」「歌をやめないおばあちゃん」リニューアルした番組を見て何を思う?_1
21年間の鐘奏者人生を振り返る秋山さん
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いくら抗議の意思を持って鐘を鳴らしても、鐘2つは鐘2つ。秋山さんが判定していると思っている視聴者からクレームを受けることもあったという。

「私が鐘奏者になったばかりの頃に韓国で『のど自慢』をやったことがあるんです。ほとんどの方が日本の歌謡曲を歌うのでびっくりしましたね。それで、20歳くらいの女性に鐘1つを鳴らしたら『どうして鐘1つなんだ』と抗議をされました。私としては『知りません』としか言えませんよね。

逆のパターンもありましたよ。ある回に登場した高校生くらいの男の子に鐘3つを叩くと、その子はサッと私の方を振り返って握手を求めてきました。普通、合格したら司会のアナウンサーに抱き着いたりするんですが、確かにこれだと私が合格させたみたいですよね」