ロキソニンもカロナールも解熱鎮痛剤というジャンルのお薬になります。
発熱や喉の痛みなどの症状で病院に行くと、解熱作用、鎮痛作用のどちらにも効果があるので医師が処方することが多い薬です。
では、医師はロキソニンとカロナールをどう使い分けているのでしょうか?
具体的には、
①体に入った時の作用の仕方
②副作用
③飲んではいけない人
の3つのポイントによって使い分けされています。
まず、体に入った時の作用の仕方で比較してみましょう。
痛みや発熱の原因は組織の炎症です。その炎症によって発生した生理活性物質の「プロスタグランジン」が痛みを感知させやすくしたり、脳に体温上昇させたりするように知らせます。
ロキソニンは発熱や痛みを感知させる「プロスタグランジン」が発生する前に、その生産をストップさせます。そのため、ロキソニンを飲むと痛みが引いたり熱が下がったりするのです。
一方、カロナールは脳から脊髄へ痛みを知らせるのを抑えると言われていますが、まだ、はっきりと体にどのような作用を及ぼすのか証明されていません。
体への作用の面からいうとカロナールよりロキソニンのほうが痛みや発熱に効果あるのですが、ここで使い分けのポイントとして重要なのが『副作用』と『飲んではいけない人』です。
【新型コロナ5類へ】セルフメディケーションの備えとなるロキソニンとカロナール。発熱したら結局どっちを使えばいいの?
普通の解熱鎮痛薬としてはもちろん、コロナワクチン接種後の副反応の発熱や喉の痛みなどでも処方されるロキソニンとカロナール。身近な薬だがどんな違いがあるのか、今後ますます重要になるセルフメディケーションの備えのためにも、ウチカラクリニックの森勇磨医師に解説いただいた。
体に入った時の作用の仕方が違う

カロナールよりロキソニンの方が副作用は強い
副作用とは風邪薬を飲んで鼻水は止まるが、眠くなるというように、薬の目的以外に好ましくない作用が出ることです。
副作用においては、ロキソニンは飲み続けると腎臓や胃に障害が起きてしまうことがあります。
炎症による発生する「プロスタグランジン」には血管を拡張する働きがあるのですが、ロキソニンを飲むことで、「プロスタグランジン」が抑えられてしまうため、同時に血管を拡張する作用も抑えてしまいます。
そうなると腎臓に血液を送る血管が広げられなくなり、狭くなるため、腎臓に十分な血液が流れなくなるのです。これが原因で腎不全になってしまうことがあります。
病院でも、頭痛がひどい人が1時間おきにロキソニンを飲んだところ、腎臓の機能を表す指標であるクレアチニンが血液検査で調べると、正常値の5倍になっていたというケースがあります。
また、ロキソニンには胃の粘膜を保護するCOX1という成分を抑えてしまうので、飲みすぎると胃が荒れて胃潰瘍になったり、最悪、胃に穴が空いたりする場合も。
ただし、風邪の間だけロキソニンを飲むくらいなら、ほとんどの人はこういった症状はでないので安心してください。
頭痛や腰痛で、ロキソニンを服用する際、用法・用量を守らず毎日飲み続ける、あるいは一度に大量に飲むなどしていると腎不全や胃潰瘍になっても全然不思議ではないので、薬の処方箋に従って使用するようにしてください。
また、ロキソニンを長期間飲む場合は、胃酸の分泌を抑える胃薬を一緒に飲んで胃潰瘍を予防することが多いです。

一方、カロナールは大量に服用すると肝臓に障害が現われることがあります。
カロナールは風邪なら1日1500㎎、痛み止めなら1日4000㎎、使用していいとされています。
4000㎎とは錠剤にすると1日14錠になりますが、そこまで飲み続ける人は少ないので、カロナールの副作用はロキソニンに比べて起こりにくいものになります。
ただし、乳幼児には注意が必要です。ラムネなどのお菓子と勘違いし、誤ってカロナールを口に運ばせないように。
乳幼児の体の大きさに対して大量のカロナールを摂取することになってしまうので、薬は子どもの手が届けないところに置くようにしましょう。
ロキソニンは妊婦、12歳以下の子どもは使用できない
最後に飲んではいけない人で比較しましょう。
ロキソニンは妊婦、12歳以下の子どもは一般的に使用しません。
特に妊婦の場合、妊娠後期にロキソニンを飲むとお腹の赤ちゃんの心臓周りの血管に異常を出現させてしまうため禁忌とされています。
また、12歳以下の子どもにもロキソニンは一般的に処方しません。
さらに子どもがインフルエンザに罹った時、ロキソニンを飲むとインフルエンザ脳症のリスクが上がるので絶対に使用はしないように。
また、ロキソニンは喘息を引き起こしてしまうことがあります。これをアスピリン喘息と言います。実は大人の喘息の5~10%を占めると言われています。
風邪薬を飲むと咳が出る人はこのアスピリン喘息が起きているかもしれません。
一方、カロナールは、アスピリン喘息を引き起こすリスクが少なく、妊婦や子どもも使用できます。もちろん、用量を守って使わないといけないのですが、万人に使えるお薬としてカロナールのほうが処方されやすいと言えます。

また、よく疑問に思われるのが医者が処方する薬と市販の薬の効き目に違いがあるかということです。
カロナールとロキソニンに限るなら、市販のものだから効かないといったことはありません。
例えば、市販のロキソニンSは処方されるロキソニンと用法・用量は同じです。
カロナールも市販薬はタイレノール、ラックルとして販売されています。
市販薬を使う場合は、飲む前に必ず説明書を読むようにしましょう。
例えば、ロキソニンの市販薬には「似たような薬を飲んで喘息を起こした人は使用不可」や「連続して使用してはいけない」などの注意書きが記載されています。
これをしっかり読んで、用法・用量を守って使うようにしてください。
また、新型コロナワクチン接種後、副反応が怖いから先にロキソニンやカロナールを飲むのはNGです。予防接種の効果に悪い影響を与える可能性があります。
ワクチン接種後、副反応で発熱した場合に飲む際は、先日の「飲んではいけない人」に当たらないのなら、ロキソニン、カロナールどちらでもOKです。
いざというときのために市販のカロナールやロキソニンを常備しておくようにしましょう。
取材・文/百田なつき
40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」(ダイヤモンド社)
著者 森 勇磨

2021年9月29日
1,650円(税込)
328ページ
4478113459
人生100年時代を生き抜く「最強の基礎教養」。血液・尿検査の絶対見逃してはいけないポイントから、エビデンスのあるがんの予防・早期発見法、健康寿命を1日でも延ばす食事術と生活習慣、太く長く生きるためのメンタルケアの方法、そして、大病になったときの再発予防・リハビリまで、正しい健康知識の超集大成!
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