大手音楽会社が「軍儀」の商品化に挑んだワケ 

——そもそも、なぜ音楽会社であるユニバーサルミュージックさんが、軍儀の商品化に乗り出したのでしょう?

たしかに弊社は音楽会社なのですが、私の所属する部門では、音楽関連商品とあわせてさまざまな商品やサービスの開発に取り組んでいます。社内は比較的新しい企画の提案をしやすいこともあり、私自身もこれまでにない発想で新商品をつくれないかと考えていました。そのときに浮かんだ企画のひとつが軍儀の商品化だったんです。それも単なるファングッズではなく、作品の描写に忠実に、かつ実際にボードゲームとしても成立するものをつくってみよう、と。

——藤田さんご自身も、もともと『HUNTER×HUNTER』のファンだったのですか?

もちろんです。なかでもやっぱり、キメラアント編にはすごく思い入れがあって。まさか「軍儀」という架空のボードゲームを軸に、あんな重厚なストーリーを描けるなんて……! いつか自分も軍儀で遊んでみたいと、ずっと思っていました。 

あのHUNTER×HUNTER「軍儀」はいかに具現化されたのか?_1
「神経質なところが、具現化系っぽいかも」と自己分析する藤田さん(撮影/鳥野みるめ) 

——ある意味、長年あたためてきたアイデアだったんですね。一方で、社内にはアニメを見ないような人もいるわけですよね。企画を通すのに苦労はしませんでしたか?

それがそうでもなくて。最初に部内で企画をプレゼンしたときの感触も良かったですし、私以上に『HUNTER×HUNTER』を愛している同僚もいて。「絶対に商品化してください!」と背中を押してくれたりもしました。やりたいことがあれば、本当に自由に挑戦させてくれる会社なんです。

しばらくしたら毎晩「軍儀」の夢を見るようになって…… 

——そこからどのように商品化を進めていったのでしょうか?

弊社にはゲームづくりのノウハウはほとんどありませんし、私自身が何かをつくれるわけでもありません。そこで頼ったのが、社外のパートナーでした。ありがたいことに「あの軍儀を商品化するなら」と、ボードゲームの専門家や、プロダクトづくりに長けたメーカーさんがこころよく力を貸してくれて。「ノヴやモラウのような歴戦の強者が仲間になってくれた!」といった感じで、すごく心強かったですね。彼らとともに、プロダクトづくりとルールづくりを並行して進めていきました。

——プロダクトづくりは、スムーズに進みましたか?

駒の形状の最適化には、かなり苦労しました。軍儀では「ツケ」といって、駒を三段まで積み重ねられるのですが、そのときに駒同士がグラつかないようにするのが思いのほか大変で。そこをクリアした上で、どの角度からみても原作通りの仕上がりになるよう、アニメを繰り返しチェックしながら微調整を重ねていきました。あの頃は、夢のなかにも軍儀が出てきたくらいです。 

あのHUNTER×HUNTER「軍儀」はいかに具現化されたのか?_2
徹底的なこだわりによって、文字通り「具現化」された軍儀の駒(画像提供/ユニバーサルミュージック合同会社) 

——まるで具現化系のイメージ修行じゃないですか……!

言われてみればそうですね(笑)。実制作を担ってくれたメーカーさんの尽力もあって、「本物感」のある駒に仕上がったと感じています。手にとっていただいた際には、駒を打ったときの「バチッ!」という感触を、ぜひ楽しんでいただきたいです。