【11月22日は「いい夫婦の日」】最長44年！ メリル・ストリープ、サラ・ジェシカ・パーカー…映画みたいな真実の愛の物語【前編】

ハリウッド・スターといえば、恋愛お盛んなイメージが強い。役作りが高じて映画で共演した役者とプライベートでも恋に落ちたり、次々に恋人を変えたり。

エリザベス・テイラー（８回結婚＆離婚）やザザ・ガボール（９回結婚・７回離婚。１回の結婚は無効に）、そしてミッキー・ルーニー（８回結婚・７回離婚）のように、何度も結婚＆離婚を繰り返した恋多きスターもいる。

わがままというか、自分の欲望に忠実というか……。自分が考える理想の夫婦像を完成させるために何度も祭壇の前に立つのだろう。

婚姻生活が5年続けば「長い」と言われ、10年だと「ほぼ永遠」と評されるハリウッドとはいえ、愛の誓いを守り続ける、結婚20年以上のおしどり夫婦も少なくない。彼らのラブストーリーは＜真実の愛＞の存在を信じさせてくれるようだ。

まずは、３度のアカデミー賞に輝いた名女優メリルと彫刻家の夫。

新人女優だったメリルは、舞台で共演した俳優ジョン・カザールと恋に落ち、結婚を考えていた矢先に彼が末期の肺がんと診断された過去が。病院でジョンが息を引き取るのを看取ったメリルは、傷心を癒すためにニューヨークを離れるが、戻ってきたときに待っていたのが、ジョンと住んでいたアパートからの退去通知だった。

メリルの荷造りを手伝う兄ハリーが助っ人に連れてきたのが、友人で彫刻家のドン・ガマー。海外に滞在することが決まっていた彼は、不在の間、自分のソーホーのロフトに滞在してはとメリルに提案。ドンが海外にいる間、２人は手紙で連絡を取り合い、気持ちを通じ合わせていったという。

当時メリルはまだ新しい恋に飛び込む心の準備ができていなかったが、『クレイマー、クレイマー』（1979）撮影中にドンが帰国。そのままロフトで同棲を始め、６か月後にはメリルの両親宅で結婚をした。メリルの母親は交際期間が短いことを心配したというが、４人の子どもに恵まれた2人は、結婚44年目を迎えている。

今年で結婚34年目のトム＆リタは、俳優同士。互いのファンと言い切り、ハリウッドでも夫婦の“ゴールド・スタンダード”を設定したカップルとして憧れの存在だ。

この6月、穏やかなトムがファンに対して怒鳴ったことが話題になったが、これは押し寄せるファンが愛妻リタを危うく転ばせるところだったから。妻を守るために立ち上がる、頼もしい夫なのだ。

2人の出会いはトムが主演していたTVシリーズ『Bosom Buddies』（1980）。リタのゲスト出演をきっかけに友情が芽生えたという。ちなみにトムは、『愉快なブレイディ一家』（1972）にゲスト出演したリタを見て、「キュートな女の子だ」と思ったそう。当時トムは大学時代からの恋人サマンサと結婚していたが、2人の間には距離ができ始めていた。

出会いから4年後、2人は『ピース・フォース』（1985）で恋人を演じることに！　
後にトムが「雷に打たれたような感じだった」という愛のケミストリーは本物で、結婚前にトムはリタが信仰するギリシャ正教に改宗して、1988年にゴールイン。

トムはリタがシンガーとしてデビューする際も応援し、彼女が乳がんと診断されたときも全力で支え、夫婦で難局を乗り切っている。

同じく結婚34年目を迎えた実力派俳優ケヴィン＆キーラも、ハリウッドきってのおしどりカップルとして知られている。

出会いはケヴィンがオフ・ブロードウェイの舞台に出演していた1977年。上演後に仲間と劇場近くのデリで食事をしていたケヴィンは、「あの俳優が好きなんだろう。行って話してこいよ」と兄に促された当時12歳の少女キーラに、感想を伝えられたのだ（ケヴィンは覚えていなかったそう）。

当時19歳のケヴィンは『フットルース』（1984）でスターになる前だったが、キラキラと輝いていたはず。

9年後、TV映画『レモン色の空』（1988）のリハーサルで出会った共演女優キーラに一目惚れしたケヴィンは、撮影中に出演者ディナーを企画したけれど、彼女は欠席。あきらめきれない彼は、自分が宿泊するホテルのマッサージをキーラにすすめ、隣接するジムで待ち伏せ。彼女を食事に誘ったのだとか。

トーク番組でこの逸話を語ったキーラは、「マッサージの予約を確認して待ち伏せしていたというから、不気味よね」と笑い飛ばしたが、相手がケヴィンだからオッケー？　そしてケビンの猛アタックの結果、交際スタート。

2人の子どもに恵まれた夫婦は、共演はもちろん、ケヴィンがキーラのTVシリーズ『クローザー』（2005〜2012）のエピソードを監督したりと、公私にわたって強力なパートナーシップを発揮している。

コロナで自宅隔離中、サロンに行けないキーラのアンダーヘアの処理をケビンがおこなったエピソードも話題に。

今年で結婚25年目となる人気女優サラ＆舞台を中心に活躍するマシュー。マシューをサラに紹介したのは、彼女の兄ピピンとトビー。兄弟で立ち上げた劇団ネイキッド・エンジェル・シアター・カンパニーでマシューが演出する舞台を上演することになり、彼の好青年ぶりに「妹にお似合い」と判断したのだろう。

当時のサラは、ゴシップ誌などで騒がれたロバート・ダウニー・ジュニアとの交際に終止符を打ったばかりで、新しい恋は探していなかったという。マシューがサラをデートに誘ったのは兄たちに紹介されてしばらくたったころで、まずは友人からスタート。

徐々に関係は深まり、4年の交際を経てブロードウェイ劇『努力しないで出世する方法』（1996）で初共演。そのころには誰もが認めるカップルとなり、1997年に結婚。

その直後、ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』（1998〜）シリーズの大ヒットで人気スターとなったサラ。彼女のメディア露出が増えたため、ブロードウェイに軸を移したマシューとの関係を格差婚のようにとらえるファンもいたが、絆が揺らぐことはなし！　

2022年にはブロードウェイ劇『プラザ・スイート』で再び夫婦役（しかも１人３役）で共演し、喝采を浴びている。

続いて大スター同士の年の差カップル。デビュー以来、ナタリー・ウッドやジュリー・クリスティら多くの女性と浮名を流したウォーレン。伝説的プレイボーイのハートを射止めたのが『バグジー』(1991)で共演したアネットだった。

自身の相手役を自らオーディションする特権を持っていたウォーレン（主演とプロデュースを兼任）は、アネットをランチに誘い、映画について話し合った。彼女を気に入ったウォーレンはすぐにバリー・レビンソン監督に「ヒロインを決めたよ。彼女と結婚する」と宣言。

しかし撮影初日には、21歳年下のアネットに対し「撮影中、君を口説いたりは絶対にしない」と誓ったという逸話もある。恋の百戦錬磨であるウォーレンの意外な紳士ぶりに、アネットが惹かれたのも無理はない？　

実際は撮影が終盤に近づいたある夜に２人で食事に行き、そのまま彼の自宅へ。台所で話しているときにウォーレンが「僕の子供を産みたい？」と尋ね、そこから交際が始まったことを、2017年に夫婦で出席したイベントでアネットが暴露した。

大胆なお誘いが効果を発揮するのも、プレイボーイならでは。アネットは、前の夫との離婚が成立し、ウォーレンと結婚したときには長男スティーブン（誕生時はキャサリン。のちに性転換した）をみごもっていた。

女優として脂がのり始めたアネットのキャリアを優先したウォーレンは、ハリウッドから距離を置き、育児に専念。男女平等が当たり前のアメリカでも、当時は珍しいケースだっただろう。
2016年に『ハリウッド・スキャンダル』の監督と主演で映画界復帰した際も、ウォーレンは「最優先事項は家族」と言い切っていて、夫婦円満の秘訣はその辺りにあるようだ。

文／山縣みどり