1987年最大の衝撃は、9月号においてリヴァー・フェニックスが表紙を飾ったことだ。映画のオフショット(1984年9月号『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』)をのぞけば、82年8月号のジャッキー・チェン以来なので実に5年ぶりの男性表紙!
また、それまでの「ロードショー」の表紙はほぼ女性が独占、たまに男性が起用されても、アラン・ドロンやジュリアーノ・ジェンマ、マーク・ハミル、ジャッキー・チェンと年齢が高めだった。だが、1970年生まれのリヴァーは掲載当時17歳。80年代の「ロードショー」の表紙を牽引してきたブルック・シールズやダイアン・レイン、ソフィー・マルソー、ジェニファー・コネリーと同じ10代でデビューを飾っているのだ。ついに若手男性アイドルが映画界にも誕生したのである。

リヴァー・フェニックス降臨。5年ぶりの男性表紙となる一方、女優側にはシンシア・ギブ旋風が
ジャッキー・チェン以来、5年ぶりに「ロードショー」の顔となったのは、若きリヴァー。そして同時期に今もトップの座にある大スターがブレイク。入れ替わりの激しい女優の世界では、シンシア・ギブが短い天下をとるが…
ロードショー COVER TALK #1987
リヴァー・フェニックス、このとき17歳

7月号/ジェニファー・コネリー 8月号/シンシア・ギブ 9月号/リヴァー・フェニックス 10月号/ダイアン・レイン 11月号/メアリー・スチュアート・マスターソン 12月号/シンシア・ギブ
©ロードショー1987年/集英社
リヴァー・フェニックスは『エクスプローラーズ』(1985)で映画デビューを飾った。傑作『スタンド・バイ・ミー』(1986)で注目され、ハリソン・フォード主演の野心作『モスキート・コースト』(1986)に息子役で出演。圧倒的な美貌と強烈な個性を兼ね備えていた彼を、「ロードショー」が放っておくはずがない。「どーんとリバー・フェニックス」(6月号)「リバー・フェニックス来日密着8日間」(7月号)「リバー・フェニックス写真集」(8月号)「リバー・フェニックス特集」(9月号)「リバー・フェニックス大特集」(10月号)「リバーのなかよしファミリーを大特写」(11月号)「とじこみリバー・フェニックスセクシーピンナップ」(12月号)と、下半期はリヴァー・フェニックス一色である。
男優に関しては、表紙にこそ登場していないものの、もうひとり大ブレイクを果たしたスターが存在する。1962年生まれ、当時25歳のトム・クルーズだ。前年末に公開された『トップガン』(1986)が1987年の日本配給収入ランキングで1位となる大ヒット。『ハスラー2』(1986)『レジェンド 光と闇の伝説』(1985)などの公開を控えており、まさにハリウッドの頂点に登りつめたばかりだった。「ロードショー」も、「トム・クルーズのすべて」(3月号)「トム・クルーズFreshカラー」(4月号)「トム・クルーズ絶好調カラー」(5月号)といった特集を展開し、6月号からは「トム・クルーズ物語」の連載をスタートしている。だが、これらの記事を担当した記者や編集者も、それから35年以上、トム・クルーズがトップに君臨し続けるとは予想していなかっただろう。
シンシア・ギブと青春映画のスターたち
女優に目を向けると、前年初登場を果たしたシンシア・ギブが最多4回表紙を飾り、新女王となった。ジェニファー・コネリーとリー・トンプソンが2回で、1983年から毎年3回以上登場していたフィービー・ケイツがまさかの0回となっている。

1月号/シンシア・ギブ 2月号/ジェニファー・コネリー 3月号/リー・トンプソン 4月号/シンシア・ギブ 5月号/ダイアン・レイン 6月号/リー・トンプソン
©ロードショー1987年/集英社
シンシア・ギブは、1986年に青春スポーツ映画『栄光のエンブレム』(1986)と戦争ドラマ『サルバドル 遙かなる日々』(1986)が公開され、一躍注目された。続いて『マローン 黒い標的』(1987)『殺しのナイフ ジャック・ザ・リッパー』(1988)が公開され、日本では新アイドルとしてもてはやされた。
だが、出演作はいずれも端役で、代表作と呼べるものがないため、人気を持続することはできなかった。現在はほぼTV専門の俳優となっている。この時期のハリウッドでは、彼女のような“ガール・ネクストドア”風の親しみやすい感じの女優が人気で、ライバルが多かったのだ。たとえば、11月号で初めて表紙を飾ったメアリー・スチュアート・マスターソンもそのひとり。青春映画『恋しくて』(1987)のボーイッシュなキャラクターが強烈な印象を残したが、本作には同じタイプのリー・トンプソンも出演している。
若手俳優にとっては青春映画が登竜門であり、80年代の青春映画の名手といえば『恋しくて』の脚本・製作を手がけたジョン・ヒューズ監督だ。ヒューズ監督は、『すてきな片想い』(1984)『ブレックファスト・クラブ』(1985)『プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角』(1986)で連続起用した秘蔵っ子モリー・リングウォルドをはじめ、『ブレックファスト・クラブ』のその他のキャスト(エミリオ・エステベス、アンソニー・マイケル・ホール、アリー・シーディ、ジャド・ネルソン)、マシュー・ブロデリック(『フェリスはある朝突然に』)、青春映画ではないが『ホーム・アローン』(1990)のマコーレー・カルキンなどをブレイクさせたことで知られている。
もし、シンシア・ギブがジョン・ヒューズ作品に関わっていたら、違ったキャリアになっていたかもしれない。
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