第5位:『ありふれた事件』(1992年)

鳥肌不可避! 映画史に残る残虐変態アウトローな「やばい奴」ベスト5_1

まずは『ありふれた事件』(1992年)に登場するシリアルキラー、ベンから。本作は、とある殺人鬼に密着取材し、犯行の一部始終を映画にしようとする監督らと、その殺人鬼当人の凶行を描いたモキュメンタリー映画である。

このベン、「ある一点を除けば」至極平凡で、どこにでもいるような人物だ。

ちょっとした社会批判を繰り返す差別主義者。口を開けば下品なジョークと尊大な態度が止まらない一方、詩や音楽といった芸術を好みもする、見栄っぱりの冴えない男。しかし彼の正体はシリアルキラー。やれ死体を沈めるには重石がいくつ必要だとか、老人はどこに金を隠しがちだとかのノウハウをひけらかしながら、日々強盗殺人に明け暮れている。

そんなリアルな小市民ぶりと、非現実的な異常性が同居したキャラクターがベンなのだ。手練れの殺人鬼のくせして時には段取りが悪かったり、小さな子どもに反撃を喰らって悶絶したりするなど、スキや油断、慢心から窮地に陥るシーンも多い。

そんな生々しさがかえって彼の〝やばさ〟を際立たせており、「ひょっとすると現実にいそう」感が〝やばい奴〟である。