#1はこちら

レジェンドたちへの「異常な愛情」

2022年12月に、二冊目の単行本となる『2022年日本語ラップの旅 -Rの異常な愛情 vol.2』を上梓したR-指定が、この本の中で真っ先に語るアーティストがZeebra。日本のヒップホップシーンの牽引役であり、『フリースタイルダンジョン』のオーガナイザーとしてR-指定を番組に迎えた、R-指定の人生に大きな影響を与えた存在について、彼はこう話す。

「Zeebraさんについては、いろんな人が語りに語ってるし、その凄さは既にいろんな角度から分析されてると思うんですね。更に、そのスキル理論や方法論についても、『ジブラの日本語ラップメソッド』という単行本で、ご自身でも形にされてるんです。

だからZeebraさんに関しては、完全にファンやヘッズとしての目線で、俺はZeebraさんのラップをこういう風に聴いて、こう解釈してるという、かなり妄想の部分を話してます。技術論についても、こういうイノベーションをZeebraさんが起こしたからこそ、それがその後のラップにこういう影響を与えたかもしれないという、自分のヒストリーも踏まえた形になっていると思いますね」

2022年放送の『キングオブコント2022』のオープニング曲を手掛け、新曲『KING』もリリースしたばかりの梅田サイファーについても、一章を割いて語られている。

「俺の所属する梅田サイファーについては、分析というよりも、梅田サイファーの成り立ちや、俺自身が参加するまでの経緯、参加する中でどういう影響を受けたのかみたいな、 『梅田サイファー自体』を話しています。この回は大阪で収録し、梅田サイファーの仲間も多数駆けつけてくれたんで、雰囲気としてもリラックスした内容になってるんじゃないかなと。

そして、この日に来てくれた梅田サイファーのメンバーにも、それぞれのメンバーが楽曲をレコメンドするという『異常な愛情』方式でトークもしてもらってます。メンバーが多い分、みんな趣味嗜好も違うし、誰がどのアーティストを紹介して、どんな部分に感銘を受けてるか、みたいな個々の部分にも注目してもらえれば嬉しいですね」

サザンの曲で言えば『ミス・ブランニュー・デイ』、サイクルの早い文化であり消費される音楽…だからこそ、R-指定が考える「日本語ラップ」の蓄積とこれから_1
すべての画像を見る

『夏の思い出』や『トモダチ』など、数多くのヒット曲を通して、ラップの存在をポップフィールドに知らしめたケツメイシに関しては、ずっと分析するテーマとして取り上げたかった存在だと話す。

「ケツメイシは、早くからメジャーフィールドで活躍した“ポップスター”である分、なかなかヒップホップやラップというカテゴリーや文脈では語られにくかったアーティストやと思うんですね。だからメンバーそれぞれのラップの特性や、ユニットとしての構成力のような、『ケツメイシのラップ』を考察するようなテキストは、ほとんど読んだことがないし、メンバー自身もなかなかそういう部分に言及されなかったんですよね。

ただ、メジャーフィールドで注目される、多くのリスナーを掴むには、ただ単にポップなら、耳馴染みがいいからではダメやと思うんです。特にラップに関しては。ケツメイシもタイトな韻の構成やったり、それぞれのテクニックや個性、グループとしてのサブジェクトの面白さという“背骨の強さ”があって、その強度が多くのファンを獲得したと思うんですね。それを改めて分析してみようと」