身も心も疲れる。それが、仕事というもの

「美輪さんはうらやましいなぁ。スポットライトを浴びて好きな歌を歌うと、大観衆が拍手してくれる。なかには『ブラボー!』なんて叫んでいる人もいる。さぞかし気持ち良いでしょう?」

コンサートを聴きに来てくださった方のなかには、そうおっしゃる方がたくさんいます。たしかに多くの方々に喜んでいただけるのは、私の幸せ。うれしいことです。でもその半面、休憩を入れて三時間、広い舞台にたったひとり、強い照明にさらされながら十四センチのハイヒールを履き、重いドレスの裾をひるがえして、立ったまま歌い続けるのです。夏には舞台の上は冷房など効きませんから、あまりの暑さにくらくらしてきます。終わる頃には、足も腰もカチンコチンに固まり、身も心もぐったり疲れ果てます。

ですが、これが仕事というもの。

好きなことを好きなようにするのは趣味であり、仕事とは言いません。仕事とは、自分に求められている責任を果たし、それに対して報酬を得ることを言います。責任を果たすためには、ときには好きではないこともやらねばなりません。場合によってはつらいこと、苦しいこと、みっともないこと、恥ずかしいことも、しなければなりません。

みなさまの仕事でも、同じでしょう? 会社員の方たちは、朝から夕方まで会社に拘束され、ときには深夜まで会社にいなければなりませんね。それは、毎日その時間を会社に捧げることに対して、お給料をいただいているから。時間と引き換えにお給料という報酬をいただいているからです。

もちろん、時間だけではありません。パソコンを操作する技術、商品を売り込む才能、事務や庶務をこなす能力、モノを販売する力、商品の魅力をアピールするテクニックなどなど、人によって提供できるものはさまざま。その上、ときには取引先の人間に愛想よくし、そりの合わない同僚ともうまく付き合い、無能な上司に従うフリまでしなければならない。これら全部をひっくるめて、仕事です。

ですから、お給料とはガマン料なのです。楽な仕事など、この世にはありません。