佐野 ようこそ、フジテレビへ。
伊藤 先輩…さっき話したじゃないですか、今日は真面目にやろうって(苦笑)。
佐野 それはそうなんだけどね。でもさ、俺らおじさん2人がしかめっ面で、誰もが言うようなことをしたり顔で話したってさ、ひとつも面白くないし誰も読んでくれないんじゃないのかな。どう思う?
――ご歓迎、有り難うございます。お2人には、入社前のお話からお伺いしたいのですが。
伊藤 アナウンサーを志した理由ですよね? はい。じゃあ、先輩からどうぞ。
佐野 僕は大学時代、テレビ局でアルバイトをしていた時期があって。制作だったんですけどね。アシスタントというか、ADというか…。
伊藤 手っ取り早くいうと、雑用バイトですよね?
佐野 そうそう。でも、当時片岡鶴太郎さんが司会を務めていた生放送の番組があって。その中のクイズコーナーは、アルバイトの俺がクイズを作って、正解、不正解のピンポン、ブーも俺が決めて、俺が押して…いま考えるとすごいことだよね。
伊藤 よくいえば自由。そのテキトーな感じも含め、とにかくテレビが盛り上がっていた時代で。今と違ってなんでもアリという感じでしたからね。でもなぜ、アナウンサーに?
佐野 最初はね、ディレクターになりたいと思っていて。でも当時も制作よりアナウンサーの試験の方が早かったので、じゃあまずは、アナウンサーの試験だと。
伊藤 結果、某テレビ局は落ちてフジテレビに?
佐野 なんか、トゲのある言い方に聞こえるんだけど。まぁ某テレビ局は最初の書類選考で落ちて、会社にすら行けなかったけど。
伊藤 僕の場合は、トータルでテレビを志向していたのは間違いないんですけど、総合職も受けるつもりでした。でも、スポーツを担当するアナウンサーになりたいという気持ちが強くて。最初に受けたフジテレビに受かったので、そのままフジに入ったという。
佐野 俺も、入社時の第一希望はスポーツアナウンサーだったよ。
伊藤 またまた……すぐそうやって後付けで入ってくる(笑)。
佐野 いや、そうじゃなくて。俺に憧れてフジの入社試験を受けたいと思っている学生さんたちに、事実は事実としてきちんと伝えておかなきゃと思ってさ。なんたって、この企画は就活に向けた対談だっていうから。
伊藤 佐野さんに憧れて!? そういう人いる?
佐野 一人くらいいるかも、しれないだろう?
伊藤 そうかなぁ。最初にディレクターを目指していたという割には、全然ディレクターマインドのない、そのカケラすら見えないアナウンサーになったのはなぜですか、という疑問が残るんですけど。
佐野 バカだなぁ、お前は。まったくわかってないよ。でもまぁ、その話をすると長くなるから話を先に進めよう。

フジテレビが誇る男性アナ対談「若手時代は、アナウンサー採用じゃなくて夜勤採用だったのかなと思ってました(笑)」
フジが誇る男性看板アナウンサー、佐野瑞樹アナ(94年入社)と伊藤利尋アナ(95年入社)。二人がアナウンサーになるまでと、苦楽を共にした若手時代のエピソードを語ってくれた。心配になった人事局長が取材に立ち会ったほど、就活生が読んでもためにならない!?対談の前半部分をお届けする。トップ画像/(左)佐野瑞樹アナウンサー (右)伊藤利尋アナウンサー
フジテレビアナウンサーたちの素顔と本音vol.8 佐野瑞樹と伊藤利尋 前編

第一志望は、スポーツアナ

まさかの夜勤採用?
――受かったときのことは、覚えていますか?
佐野 覚えてますよ。人事の人から電話がかかってきて。「佐野くん、内定です」と言われて。あんまり驚いたので思わず「僕でいいんですか?」って、言っちゃいましたから。
伊藤 受かった当時、僕は下宿にいて。携帯電話のない時代でしたからね。受かった人にだけ電話がかかってくると言うのを聞いていたので、電話が鳴った瞬間、鳴った!とまずそのことに驚いて。ということは、受かったんじゃないのか?とニヤリとしたのを覚えています。
――佐野さんが94年入社で、伊藤さんは一つ下の95年入社。初めて顔を合わせたときのことは覚えていますか?
伊藤 それが……まったく記憶にないんですよねぇ。
佐野 俺も覚えてないなぁ。気がついたら、俺も伊藤も夜勤要員になっていて。スケジュール表の一番下に、夜勤という欄があるんだけど、そこに佐野、伊藤、佐野、伊藤、佐野、伊藤……というハンコがきれいに並んでいて。もしかしたら俺アナウンサー採用じゃなくて、夜勤採用だったのかなと思ったくらいだから(笑)。
伊藤 佐野さんが入社したときは、深夜1時までスタンバイ(待機)だったんですよね。
佐野 そう、17時-25時勤務だった。
伊藤 それが阪神・淡路大震災後、20時-28時勤務に変更になって。
佐野 当時、フジテレビには『プロ野球ニュース』という看板番組があって。錚々たる解説者の方が顔を揃えていたんだけど、スタンバイの終了が25時だと、そのチームに合流できるんですよ。「佐野―っ、今日は◯◯(店名)なぁ」とか言われるから、「はぁーい!」って返事して、そこに行けば、お寿司、中華、蕎麦屋、その夜勤の日々が楽しかったんだよ。
解説者の人たちの輪に加わって、飲んで、食べて、騒いで。それが毎日だからね。夜勤採用かなってずっと思ってましたけど、やっていることは楽しくて……すっごく太っちゃいました。
伊藤 まさかとは思うけど…それがオチ!?

人事部に異動願いを提出!?
伊藤 佐野さんがくだらない話しかしないようなので、僕が真面目な話をしますね。僕は入社してすぐ、『めざましテレビ』に付くことになったんですけど、ディレクターの指示に応えて何かをしゃべります。それでVTRが出来上がります……という仕事だったので、正直なところ、面白くないなぁというのがずっとありました。
そうか、テレビは本質的にはディレクターのもので、モノ作りをしたいと思ったら、ディレクターにならなきゃダメなんだとずっと思っていて――。
佐野 ディレクターになりたくて異動願いを出したんだよな。
伊藤 4年目のとき第2制作部……当時バラエティを作っている部署でしたね。
――本当ですか?
伊藤 ホント、ホント。アナウンサーとしてのレギュラーがあったので、異動はすこし先になるけど、発令はするからと。そこまで話は進んだんです。で、発令直前にフリーのディレクターに話をしたら、ちょっと待て!と。ディレクターになりたいんだったら、いつでもおれの会社で雇ってやるから、いまは騙されたと思ってアナウンサーを続けてみろ……と言われて。
――それで翻意した?
伊藤 その話をしたのが金曜の夜中だったんですけど、発令は月曜の朝で、土日は人事部が休み。当時は携帯電話もなかったからどうしようか迷ったんだけど、土曜日の午前中だったかな、人事部に電話して誰か出たら、ステイ……アナウンス室に残る。出なかったら発令でいいやと思いながら電話したんですよ。そしたら――
佐野 1コールで出たんだよな。
伊藤 そう。それも当時の人事局長が。で、「アナウンス室の伊藤です」と言ったら、間髪を入れずに、「わかった。お前、異動をやめたいんだろう?」と言われちゃって。この件があって以降は吹っ切れたというか“アナウンサーで!”という気持ちに変わっていったんですよね。幸い僕は……佐野さんも同じだと思いますけど、番組にも恵まれていたので。
佐野 それはね、本当にそう思う。さっき伊藤が、テレビ番組はディレクターのもの……というような話をしていたけど、それだって必ずしもそうじゃなくて。自分の関わり方次第では、モノ作りに参加できる仕事だからね。
伊藤 これは、後になって気づいたことですけど。アナウンサーが面白くないと思っていた頃はディレクターのいうことを、はいはいと聞いて、終わってひとりになってから、愚痴というか、文句を言っていただけで。番組を作るパーツとして、自分が果たさなきゃいけない責任もあるし、自分のクリエイティビティもオンエアにそのまま反映される仕事なんだというのに気づけたことは、本当に良かったと思っています。
佐野 もうひとつ、彼は覚えていないと思うから僕から言っておきますけど。「異動するのをやめました」というから、「何で?」と訊いたら、「佐野さんの仕事ぶりを見て、やっぱり僕、一からアナウンサーのことを勉強しようと思います」って、言ったんだよね。忘れてるだろう?
伊藤 おいおいおいおい。いきなりなんてことを言い出すんですか。そんな嘘って、あります? 一応、ちゃんとした対談の中で、そんな嘘を言ってもいいの?
佐野 いやだから、先に断ったじゃない。伊藤くんは覚えていないかもしれないですけどって。でも俺は覚えているから。
伊藤 いやない。それだけは、絶対にない。佐野さんの仕事ぶりを見ている人なら誰も、そのセリフだけは口が裂けても言わない。
佐野 またまた照れちゃって。言ってたじゃない。「最後の決め手は佐野さんの仕事ぶりを見てです」って。
伊藤 あり得ないわ。誰なの!? この人を連れてきたのは? 佐野さんの仕事ぶりといえば「弁当が好き」以外印象にありませんよ!

「25年度アナウンス職」を現在募集中!8月31日(木)正午〆切!
詳しくはフジテレビ採用HPをチェック!
https://www.fujitv.co.jp/recruit/
取材・文/工藤晋 撮影/猪原悠
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