100回大会への「布石を打ちたかった」
2年生は、“4本柱”の一角である平林が2区7位で6人抜き、山本歩夢が3区5位で2人抜く活躍をして、レースを立て直してみせた。
駅伝では悪い流れでタスキを受けると、焦りからオーバーペースになったり、単独走がうまくできなかったりと、思うように力を発揮できないことが多い。
だが、彼らは劣勢の中でもしっかりと走り切った。力がある証拠だ。今後は、チームの中でさらに重要な役割を担うことになるだろう。
さらに10区では、今回が初の学生駅伝となった佐藤快成が見事な走りを見せた。
もともと1年時から5区・山上り候補として前田監督が名前を挙げていた選手だが、ケガが長引いたこともあって、これまでなかなか出番がなかった。
今回も、上尾シティハーフマラソンで好走を見せても、「エントリーメンバーぎりぎりの16番目かな」と前田監督が話していたほどで、出番がないのではと思われていた。
だが、それから調子を上げ、中西や鶴らが故障したこともあって、チャンスが回ってきた。
そして、佐藤はその起用に応える。区間4位と好走し、7位から4位まで順位を上げて大手町にフィニッシュした。新シーズンは主力としての活躍が期待される。
「来年に向けての布石も打ちたかった」
前田監督がこう話すように、第100回大会、101回大会に向けて、きっちりと種はまいた。
2区と5区に経験者がいることも、大きなアドバンテージだ。
箱根の区間配置を考える際に、まずはエース区間の2区と、山上りの5区を決めるという指揮官が多い。
前田監督もそうで、「2区と山(5区、6区)をある程度決めてから、他の区間を考える」と話していたことがあった。それほど重要度の高い区間なのだ。
今回は平林が2区を担い、1時間7分32秒で区間7位。また、前回は伊地知が1時間7分51秒の区間12位で走っている。
区間順位はさておいて、1時間7分台で2区を走り切ることができれば、十分にしのぐことはできる。経験が勝負を左右することもある難しいコースだけに、このタイムで走れる選手が2人もいるのは、かなり大きい。
もっとも2区を“勝負区間”にするには、さらなるレベルアップが必要ではあるが……。
5区は今回、伊地知が1時間12分27秒で区間7位だった。本人には納得のいく走りではなかったかもしれないが、不安があっても無難にこなしてみせたのは、さすがだ。準備万端であれば、さらに記録を伸ばしてくるだろう。
実は、この5区は平林も候補に挙がっていた。往路のフィニッシュ後、芦ノ湖で前田監督が冗談めかして平林に「来年は上りをやるか?」と話かけている場面に出くわした。
平林も「70分を切りたいな」と乗り気で応えていた。伊地知は2区を担える力もあるだけに、案外、その冗談めかした会話が本当に実現するかもしれない。
また、佐藤も年間を通して準備ができれば、新たな上り候補に名乗りを上げてくる可能性もある。
新たな戦力の台頭があり、主要区間の経験者が残る。
次回記念すべき100回大会で、主役の座に座るのは國學院大かもしれない。
取材・文/和田悟志
撮影/北川直樹