「今日はホームラン2本だね」

セ・リーグ2連覇を飾った東京ヤクルトスワローズ。その原動力となったのがホセ・オスナ(29歳)。来日2年目となる今季は20本塁打を放ち、チーム2位の74打点を記録。今季年俸は推定1億5400万円で、この日本シリーズでも活躍を見せ、見事敢闘賞となった。

そんな助っ人を支える施設が都内某所にある。「アスリートの為のメディテーション(瞑想)」を掲げる株式会社WINZONEだ。

同社代表取締役の兼下真由子さんは、昨年4月の立ち上げ以降、この1年間でメジャーリーガーやサッカー日本代表選手、オリンピアンなど、200人以上の現役アスリートを指導してきたという。兼下氏を直撃した。

――ヤクルトのオスナ選手が通われているというのは本当ですか?

はい。今シーズンから来られています。こちらでは基本的にヨガをやられますね。呼吸を整えたり、自律神経を調整したり、高周波治療で肉体のハリやコリを取るためのマッサージをしたり。自律神経のバランスが乱れると体が堅くなることがあるので、その辺りも含めて調整しています。

――具体的にどんなメニューを?

ヨガのほかにも、ペアストレッチというものをやっています。オスナ選手に横に寝てもらって、私が股関節や膝の可動域を広げるためのアシストをしながら調整することもよくあります。

「今日の自分にはこれが必要だ」というリクエストをいただくことが多いですね。当日朝の体調次第で、もともとヨガを予約されていたものの、「やっぱりマッサージのほうがいい」とおっしゃるときもありますし、その逆もあります。ご自身のコンディションを客観的に察する能力が非常に高いのだと思います。

写真/共同通信社
写真/共同通信社

――トレーニングの効果について、オスナ選手は何とおっしゃっていますか?

「授業のあとは気分がよくなります」と感想を伝えてくださります。

――ちなみに、どのくらいの頻度で通われているのですか?

私からは詳しく申し上げられませんが、可能な限り来ていただいていると思います。直近でヨガを受けられてからの打率は5割を超えているんじゃないでしょうか。

――プレッシャーのかかる時期なので、緊張感もあったのではないですか?

普段からユーモアがあり、明るくて人間性も素晴らしい方なので、特にコンディションが悪そうと感じることはなかったです。でも、それなりに疲労は溜まっていたので、少しでも気持ちが前向きに、楽になってもらえればと思い、いろいろと声かけはしています。

――具体的にはどんな声かけを?

たとえば、お帰りになるタイミングで、「あなたはスーパーヒーローでワールドチャンピオンだね。今日もホームラン2本だね」みたいなことを言うと、「がんばります」と素敵な笑顔を見せてくれます(笑)。

実はこの声かけは、メディテーションの技術のひとつで、「サンカルパ」という自己暗示のような手法です。「ホームラン2本だね」と言われると、「今日ホームランを打つ気がする」「自分なら打てる」と感じてくるものなのです。

自分を信じるという行為は脳にとってすごく有効なので、意識してそういう声かけも行っています。