「男はうっかり信じたらダメ」という決めつけ

『セーラー服を脱がさないで』『Yes-No』『お嫁においで』…Z世代とのカラオケで避けるべき昭和の名曲_3
ピンクレディーの楽曲も、男性像を固定している?

男性ボーカル曲にばかり焦点をあててきたが、女性が男性像を決めつける名曲だって存在する。「男は狼なのよ 気をつけなさい」。曲頭から男性の野蛮性を強調するのはピンクレディーの『S・O・S』だ。いくら男性が羊の顔をしていても、「瞼を閉じたら負け」だし「何もかもおしまい」らしい。あんまりだ。こんな曲を女性とふたりきりのカラオケで歌われた男は、「警戒されている…!」と落胆すること請け合いだろう。

一方、同じピンクレディーと阿久悠のタッグから生まれた名曲『UFO』では「地球の男に飽きたところよ」というフレーズで締められる。深読みすれば、セクシャルマイノリティを示唆しているように感じられる方だっているかもしれない。

本記事で紹介した楽曲は、発表当時、すでに物議をかもしていたものも存在する。しかし、ジブリ映画『崖の上のポニョ』の主題歌を担当した、藤岡藤巻(まりちゃんズ)が『ブスにもブスの生き方がある』と、今では”大炎上間違いなし”の差別的なコミックソングもリリースしていた時代こそ昭和だ。ジェンダーレスが叫ばれる時代の若者にとっては、昭和歌謡がもたらす衝撃は計り知れないだろう。

もちろん、曲自体に罪はない。かつての価値観で歌われた名曲のワンフレーズを取り上げ、重箱の隅をつつくような指摘を始めればキリがないようにも思えてしまう。

もっといえば、時代の変遷とともに性の多様化が認められてゆく未来。今の若い世代に親しまれる恋愛ソングだって、「男性女性を分けることから差別的」と、指摘されてしまう将来が訪れる可能性だってゼロではないのだ。

だからこそ今は、昭和の曲を危険をおかして歌うより、もしかしたら近い将来歌えなくなってしまうかもしれない平成や令和の曲を目一杯歌っておくべきなのかもしれない。