「不登校」から広がる多様な学び
こんなにも多くの選択肢と、そして何より、実に多種多様な仲間がいるんだな。
本書を読みながら、また読み終えてから、自分の中にじわりじわりとやってきたのは、そんな安心感だった。
いわゆる「不登校」をテーマにした数ある著作の中でも、これほど多くの、そして多様な学び場や人びとの実例を生き生きと描いて見せてくれる本は、これまであまりなかったのではないかと思う。
一口に「不登校」と言っても、その内実はさまざまだ。だからこそ、わたしたちは、そのあり方もまた個性的であっていいし、さまざまな学びやその支援のあり方を知ることができればホッとする。かつて不登校だった現在の社会的成功者を見て、自分(の子ども)もそうならなければ、などと思う必要はないし、経済的に恵まれた家庭でないとこれだけの機会は得られないんだと不満感を過度に抱える必要もない。
むろん、本書でも指摘されている通り、いわゆる一条校以外の学び場を選択する場合、経済格差の問題は依然として深刻だ。早急に解決しなければならない問題である。しかしそれでもなお、すでに現在においてもかなりの程度、だれだって「不登校でも学べる」のだ。
わたしも仕事柄、多様な学びの選択肢はある程度知っているつもりだった。交流もそれなりに多いと思っていた。でも本書は、それがまだごく限られたものであったことを教えてくれた。その視角の広さは言うまでもなく、教育現場の生き生きした描写においても、著者のおおたさんには大きな信頼感を一方的に抱いてきたが、その本領が今回も存分に発揮されている。
「『学校だけに頼らない学習スタイル』が当たり前になれば、『不登校』という概念自体が消滅します」と著者は言う。
「学校の中で学びを完結しようとするのではなくて、学び場の1つとして学校もあるというイメージ」。
そんな時代は、すでに手の届くところに見えている。
本書は、不登校に悩む子どもや保護者等に多様な選択肢を教えてくれるのはもちろん、そんな近未来の教育の姿もまた、鮮やかにイメージさせてくれるものでもある。