海を越えて旅気分は一層盛り上がる

湘南から高速に乗り、川崎経由で一気に東京湾アクアラインを渡るというルートもあったのだが、せっかくの一人気まま旅。
より面白い方がいいと思ったので、横須賀の久里浜港から東京湾フェリーに乗ることにした。

平日の広間ということもあり、カーフェリーの船内はガラガラ。
デッキに出て気持ちいい潮風を浴びながら、僕は妻にLINEで写真付きのメールを送った。

「探さないでください。#さよならニッポン」と。

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予約なしですぐに乗れる東京湾フェリー

“お試し車中泊で短い旅をしてくる”とは伝えていたものの、行き先は知らせていなかった(だって僕自身がさっき決めたから)ので、妻からは予想通りのいいリアクションが返ってきた。

「!! どこに向かってるの!? まさか、韓国!?」

僕はそれに返信することなく、そっとラインアプリを閉じた。

神奈川県横須賀の久里浜港から千葉県富津市の金谷港まではあっという間の1時間弱だったが、ドライブの合間に船旅を挟むというのはなかなかいいアイデアだったようで気分が高揚した。
たった一泊二日のショートトリップなのに、一気に“非日常感”が高まったのだ。

そして、さらに旅気分を盛り上げるものといえば温泉だ。
港から10分ほどのところに、「海辺の湯」といういい感じの温泉を見つけた僕は迷うことなく突撃した。
海岸に面した展望風呂で、波音を聴き、大海原を眺めながらの入浴は最高だった。
平日の昼間っからこんなことしてていいのかな?という若干の後ろめたさは感じたが。

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天然温泉 海辺の湯。たいへん気持ちの良い温泉でした

ゆっくりと温泉を楽しんで再び車中の人となった僕は、今夜の宿を定めることにした。
今は車中泊が人気なので、宿泊OKのスポットはアプリを使って簡単に見つけることができる。
今回は房総半島の先端の方にある「道の駅ちくら・潮風王国」に決めた。

晩御飯は道中のスーパーで買った豚肉ともやしを、アウトドア用のコンパクトバーナーでチャチャっと調理して食べた。
なんてことはない、シンプルなアウトドア飯だが、これがまあ美味いのなんの。
やっぱり非日常空間で一人楽しむ食事は格別のものだ。

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車内で肉を焼く

ちなみにその日、東京は熱帯夜だったが、海辺は夜になると気温が意外なほど下がってきた。
夏場の車中泊は、車内の暑さとの戦いと聞くが、水辺や標高の高いところを寝場所に選べば問題ないじゃん、ということを確かめられたのが今回の旅の大きな収穫かもしれない。

車中泊の絶対的なマナーとして、駐車中は車のエンジンを止めなければならないので、外からの風を入れるために後部ドアの窓は左右とも半開きにしておいた。
そこから気持ちのいい海風が入ってきたが、特に今のような夏場は虫の侵入を防ぐ必要がある。そのためにとても役に立ったのが、道中のカインズで買っておいたウィンドネット(車の窓が網戸になる)、なるアイテムだった。

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これがなかったら就寝中も窓を開けられず、寝苦しい夜を過ごさなければならなかったのかもしれない。

扇風機はアウトドア用の薄型・コンパクトサイズのものを積んでいったが、狭い車内で一人で使うには十分の性能だった。
扇風機の電源は準備していたポータブルバッテリーから取り、一晩中回していてもバッテリーの残量は十分だった。

今回は夏なのでマットの上にゴロリと転がるだけで良かったが、寒くなる冬場の車中泊では電気毛布などを使うことも考えなければならないという。
ポータブルバッテリーは、電気毛布を一晩中使えるくらいの容量のものを選ぶべし、という車中泊の先達の意見を聞き、500Whという中くらいサイズのものにしたのだが、なるほど、このくらいの容量があると安心感につながる。

これからも車中泊に必要なものを見つけ、少しずつ買い足しながら旅をすることになるのだろう。
アリンコ騒動だけはまったくの想定外だったが、今回の車中泊前哨戦、一泊二日ショートトリップはなかなか有意義だったのではないだろうか。

僕は普段不規則な生活をしているから、年中睡眠障害気味なのだが、一日中車を走らせたりアリンコと格闘したりして疲れていたからか、その日は車内でぐっすり眠ることができた。
とはいえ、朝日が昇りはじめる早朝には目覚めてしまい、車内をサクッと片付けたのち、右手に朝日と海を眺めながら、房総の東海岸沿いを北上。
妻と娘と犬が待つ、東京の我が家を目指したのだった。

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房総半島で見た夕日(左)と朝日(左)
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