ロードショー編集長の偏愛MOVIES 2
まずは「見る前」の予習項目
最初にハッキリ言おう。『ソー:ラブ&サンダー』は基礎知識がなくても楽しめます。
多様なヒーローが複雑な世界を構成しているMCU(Marvel Cinematic Universe=マーベル社のアメコミを原作にしたVFX超大作映画シリーズ)最新作ではあるものの、並行世界を描いた5月の『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』に比べたら、ストーリーもキャラクターもシンプル。笑って泣いて2時間弱。解説も必要ないかな…と思いつつ、わかっているともっと楽しめる項目だけ、ささっとまとめたい。
まずは見る前に知っておくといいこと。
◇ソーは神様
MCUのヒーローのほとんどは、元は普通の人間。改造されただの、蜘蛛に噛まれただのでスーパーパワーを手に入れるが、ソーは北欧神話の戦神トールを元に作られたキャラで、最初から無敵なのだ。雷を操る能力もあって、膂力はハルクと張り合い、アベンジャーズ最強クラス。
「大いなる力には大いなる責任がともなう」という『スパイダーマン』の名セリフに象徴されるとおり、後天的ヒーローたちは、パワーの使い道と責任を失敗しながら学んでいく姿が映画のテーマになるが、ソーはそういう悩みとは無縁。ゆえに基本的に能天気というか脳筋というか、ほかのシリーズより明るいのが魅力だ。
まあ、それゆえに挫折したときのメンタルの折れ方はハンパなく、激太りしたりするんですけどね…。
そんなわけで『アベンジャーズ』イチの陽キャによる本作は、知識などなくてもただ楽しめる、夏にぴったりの娯楽作。同じくお笑い担当(?)の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』チームがからむ冒頭からノリノリです。
◇これまでのお話
ソーが登場する『アベンジャーズ』シリーズは7作あるが、本作を楽しむためなら、『マイティ・ソー』(2011)『同/ダークワールド』(2013)『同 バトルロイヤル』(2017)の3作見ておけばいいかな。見なくても大丈夫だけど。
傲慢なふるまいで神々の世界アスガルドを追放され、地球に落とされたソーが、天文学者ジェーンと恋におち、父王オーディンや悪戯がすぎる弟ロキ、友人たちとからみながら成長を遂げていく。故郷はその後滅ぼされたものの、生き延びた人々は地球に移住して、新生活を築いている…というのがこれまでの流れ。
今回は、深い恨みから”神殺し“となった男ゴアが新アスガルドを襲い、連れ去られた子供たちを救うためにソーが戦いを挑むストーリー。そこへ、ソー愛用だったハンマー「ムジョルニア」の力でスーパーパワーを身につけた元カノ、ジェーンも登場。え、そんなキャラだったっけ…と思いつつ、タイカ・ワイティティ監督らしい荒唐無稽な笑いとパワフルな演出で引き込まれてしまう。
◇キャストが豪華
ソー役でブレイクしたクリス・ヘムズワースは、ますますカッコよく続投、製作総指揮も兼ねている。ジェーン役のナタリー・ポートマンはお久しぶり。バレリーナを演じた『ブラック・スワン』(2010)並みに身体をしっかり作り込んで、アクションに体当たり。特殊メイクでわかりづらいが、神殺しゴアにはなんと『ダーク・ナイト』(2008)のクリスチャン・ベール。また、父神役のアンソニー・ホプキンスや、姉にして最凶のヴィラン女神を演じたケイト・ブランシェットら大スターが回想シーンでチラ見えするのもうれしい。