「誰も助けてくれない。若者は選挙に行こう」
「ジェネレーション・レフト」。格差の是正や気候危機への対応を求め、社会運動を繰り広げる若い世代を指すこの言葉が、世界中で注目を集めている。その中心は、Z世代やミレニアル世代。この世代の多くは、資本主義を見直し、社会主義を肯定的に捉える左派的な主張に共感する傾向が見られるという。
この言葉を自身の著書で提言したイギリスの政治理論家、キア・ミルバーン氏を、全国の学校で主権者教育を行うたかまつななが直撃。日本の若者の政治参加を促すためには何が必要なのか、ヒントを探った。
――まずは「ジェネレーション・レフト」を書かれたきっかけと、そこに興味を持った理由を教えてください。
ある現象に気づいたからです。イギリスでは、政治における世代間の分離が顕著になっていました。若者たちが左派へと移行する一方で、高齢者、特に55歳以上もしくは定年退職した65歳以上の世代でより顕著に右派へ移行しているということが明確になりました。
私はなぜこのような現象が起きたのか原因を知りたいと思い、自分なりに考察しました。
ーーなぜ若者たちは、左派へと移行しているのでしょうか?
これは世界共通ではなく、イギリスとアメリカで最も顕著に表れている現象です。特にイギリスで顕著に表れたのが、労働党の左派のリーダーだったジェレミー・コービン氏が労働党の党首に就任したことが注目を集め、若者たちからも支持された時です(2015年)。
アメリカだと、バーニー・サンダーズ氏が2016年に民主党の大統領選挙の候補者になろうとした時に、多くの若者や若い活動家たちの支持を集めました。この傾向は西ヨーロッパでも見られますが、東ヨーロッパやその他の世界の国々ではあまり見受けられていません。
理由は複数あると考えられますが、第一に挙げられるのが、労働年齢の人口の中で、特に若者たちの生活水準が大幅に低下したことです。主な原因は賃金水準の停滞、つまり賃金が上がっていないのです。
2008年の経済危機を起点に、イギリスの賃金水準をインフレ率も含めて計算すると、2028年になってもそれ以前の水準まで回復することはないと言われています。つまり、20年間も賃金が上がらない中で、家賃や電気料金などの生活にかかるコストは高くなっているのです。
それは仕事の給与を頼りに生活をしている若者にとって非常に重大な問題です。すでに家を所有し、年金を株に投資しているような高齢者の収入は、住宅価格などの資産価格の上昇や、年金額に依存しているため(若者とは)立場が異なります。
つまり、高齢者の物質的な関心は、株式や住宅価格などの資産価格の経済です。それに比べ、若者の関心は賃金や仕事の給与など、近年停滞しているものと結びついています。これが若者が不満を抱くことになっている主な原因なのです。