なぜアシックスは利益率を高めることができたのか?

しかし、アシックスにも苦戦した時代があった。2016年12月期から売上が低迷、2018年12月期に203億円の最終赤字となったのだ。

改革に乗り出したのが現在の代表取締役会長CEOの廣田康人氏だ。2018年1月に顧問として入社し、2018年3月に代表取締役社長COOに就任した。

改革の柱の一つが、2019年に導入したカテゴリー経営体制だった。5つのカテゴリーの責任者が、製品の企画・開発から生産・販売まで、一貫して責任を担う仕組みへと移行した。

従来は、生産部門と販売部門が独立して動き、販売部門の権限が強かった。廣田氏によると、販売不振の理由について、作る側は売り方が悪いと言い、売る側は製品に問題があると言う状態だったという。

カテゴリー経営では、誰に、どの商品を、どの価格帯で、どの販路を通じて売るのかを、一貫して判断しやすくなる。部門ごとの判断を、カテゴリー全体の売上や利益につなげる体制を整えたのだ。

廣田氏は商品開発でも巻き返しを図った。その象徴が、2019年11月に始動した社長直轄の「C-PROJECT」である。

アシックスはトップ選手に選ばれるブランドとしての地位を確立していたが、ナイキが軽量で高いエネルギーリターンを持つ厚底フォームとカーボンプレートを組み合わせた「ヴェイパーフライ」を発表。2017年に市場投入し、多くのランナーに支持された。

好調のアシックスのランニングシューズ(写真/shutterstock)
好調のアシックスのランニングシューズ(写真/shutterstock)

薄く、軽量なモデルでランナーから盤石な支持基盤を得ていたアシックスは対応を迫られた。ナイキの厚底は常識外れのモデルだったが、実験では、従来のレーシングシューズと比べ、ランニング時の代謝エネルギーコストを平均約4%低減する結果が示され、トップ選手の多くが厚底シューズへと流れていったのだ。

「C-PROJECT」はそれに一矢報いるためのプロジェクトで、研究、設計、開発・生産、スポーツマーケティング、法務・特許などの人材を集約。部門を横断して意思決定を速め、選手の声を商品開発に直接反映した。

通常は数年かかる新モデル開発を、1年余りという短期間で進めた。技術力を開発スピードを高めたのだ。そこから生まれた「METASPEED」シリーズが巻き返しの一翼を担い、2021年に0%だった箱根駅伝の選手のアシックス着用率は2025年に25%台まで上昇している。

経営の責任をつなぐカテゴリー制と、競技性能を追求するC-PROJECT。こうした改革に加え、商品構成や販売網の見直しも進めた。アシックスの営業利益率は、2018年12月期の2.7%から2025年12月期には17.6%まで上昇している。