クールジャパンは「トータルで見て成功」なのか

パーク開発を主導したマーケティング会社「刀」の森岡毅氏にも、説明すべきことはある。採算の目安とされた年150万人に対し、初年度の来場はスパを含めて100万人にとどまった。

その一方で、政府系金融機関による新たな融資が検討されている。刀自体も2025年6月期に累積損失が約62億円に達し、2026年2月には同社が手がけた東京・お台場のテーマパークが開業から約2年で閉鎖された。

もちろん、これだけで刀や森岡氏の事業そのものを「失敗」と断定することはできない。しかし、巨額の政府系資金も関わる以上、当初の需要予測や投資判断が妥当だったのかは検証されなければならない。

ジャングリアを手がける株式会社刀の代表取締役CEO・森岡毅氏(写真/共同通信社)
ジャングリアを手がける株式会社刀の代表取締役CEO・森岡毅氏(写真/共同通信社)

では、なぜこうした公的支援が繰り返されるのか。ここで考えたいのが、これまでのクールジャパン政策である。答えはハッキリしている。政府が、クールジャパンの失敗をまったく反省していないからだ。

中村伊知哉氏の件を見ればわかる。元官僚で、2013年には政府のクールジャパン推進会議でポップカルチャー分科会の議長を務め、以来、国のコンテンツ政策に長く関わってきた人物だ。

また、2016年から2023年まで吉本興業ホールディングスの社外取締役を務め、その在任中の2019年、クールジャパン機構は吉本興業とNTTグループの事業に出資している(ただし、中村氏がこの出資の意思決定に関与したことを示す資料は確認できない)。

そのクールジャパン機構は、累積赤字が約540億円に達し、他機関との統合または廃止を前提とした検討が進んでいる。ところが中村氏は、機構を含むこれまでのコンテンツ政策を「トータルでみて成功」と自ら評価した。

そして経済産業省は、2033年に日本発コンテンツの海外売上高20兆円を目指す新戦略を取りまとめる研究会で、この人物を座長に据えている。廃止といっても、国がカネを出してコンテンツ産業を後押しする政策そのものは、形を変えて続こうとしているのである。