なぜ日本でモルックは広がった? 海外参加者も驚くその熱気

取材を総合すると、日本でモルックが広がった背景には、いくつもの要因が重なっていたということだ。「性別や年齢、運動経験など関係なく勝負できる」「広いコートや特別な競技場が必要ない」「遊びとしても、ニュースポーツとしても楽しめる」というモルックそのものの魅力に加え、テレビ番組で繰り返し取り上げられ、SNSや動画配信を見て興味を持つ人が増えた。

さらに、日本モルック協会や各地の愛好家による体験会や大会などが各地で開かれ、自治体の地域おこしや高齢者施設などでも積極的に取り上げられるようになった。エントリーすれば、自由に「世界大会」にも出られる間口の広さも、日本で人気に火がついた理由の一つだろう。

日本でのモルックの盛り上がりは、フィンランドはもちろん、他の国からも注目されている。オーストラリアから参加したショーンさんは、映像制作の仕事をしていて、オーストラリアでモルック人気が高まり始めた6年ほど前から競技を追い、ドキュメンタリー作品も制作した。「日本では、モルックの動画やライブ配信がよく見られているでしょう。オーストラリアでも日本みたいにバズってほしいな」と話す。

さらに大会会場を散策してみると、すれ違う参加者たちから次々に握手を求められている年配の選手がいたので話を聞いてみた。昨年のポーランド大会などで2度優勝、数々の入賞経験を持つフィンランドのヤコさんだった。

モルック愛好家の間ではよく知られた存在だという、フィンランドのヤコさん(左)
モルック愛好家の間ではよく知られた存在だという、フィンランドのヤコさん(左)
すべての画像を見る

筆者が日本人と分かると、「日本の人たちから、たくさんお土産をもらいましたよ」と、ポーチに入ったクッピーラムネやボーロの小袋を見せてくれた。

ヤコさんはかつては毎日50投ほど、今も10投はモルック棒を投げているという。世界王者ともなれば、やはり日々モルック棒を投げ込んでいるようだ。「今度、私の68歳の誕生会でもモルックやるんだよ」という。

「今年も優勝を目指していますか?」と聞くと、笑いながら「一番大事なのは、次の試合。そしてもっと大事なのは、次に投げる一投です」と言った。そして最後に、日本の“モルッカー”たちへエールを送った。

「こんにちは、日本のみなさん! 次の試合で会えるのを楽しみにしていますね!」

取材・文・写真/堀内京子