「打者の数字は打率、打点、ホームランだけでいい」

――その夏の甲子園は智辯和歌山の優勝で幕を下ろしました。江本さんもご覧になっていましたか?

ベスト8に残ってるようなチームはしっかりと鍛えられてたし、軟弱なチームはなかったな。そういう高校だけが代表に選ばれれば、暑さ対策による7回制移行なんてくだらない議論もなくなるだろうに。

――しかし、甲子園の土を踏みたいという球児もたくさんいることですし……。

人生そんな甘いもんじゃないよ(笑)。俺が高校生の頃は記念大会以外は複数県をまとめた地方大会単位で代表を決めてた。俺の地元は高知なんだけど、四国からは2校しか出られなかったからね(※)。

(※1964年南四国大会、2年生エースの江本氏擁する高知商業は準決勝で徳島商業に敗れる。3年時は部員の不祥事で処分され出場を辞退)

そのくらい甲子園の道は遠かった。1978年から運営が金を儲けるために毎年全都道府県から代表が出られるようになったけど、そんなんじゃ大会全体のレベルが下がる一方だ。

もう一回レベルの高い高校野球に戻すには、出場校を減らすしかないね。

「俺の子供の頃の甲子園なんて、法政二高・柴田勲と浪商の尾崎行雄が投げ合ったりして、プロ野球と同じくらいレベルが高かったからね」
「俺の子供の頃の甲子園なんて、法政二高・柴田勲と浪商の尾崎行雄が投げ合ったりして、プロ野球と同じくらいレベルが高かったからね」
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――なかなか厳しいご意見です。一方、メジャーで日本人打者がホームランを量産。大谷翔平選手が30本、村上宗隆選手が29本、岡本和真選手が28本、鈴木誠也選手が24本と、4人とも30本塁打に届く可能性があります。

それぞれ自分たちの長所を生かせる球団に行けたのはあると思うけど、いかんせん打率が悪いわね。

――大谷選手、鈴木選手こそ.270台ですが、岡本選手は.227で村上選手は.215。しかし、昨今は打率よりもOPSなどの長打率や出塁率を含めた指標が重要視される傾向がありますね。

ゴチャゴチャした余計な数字は一切いらないよ。打率、打点、ホームランだけでいい。野球のおもしろさはデータとにらめっこすることじゃない。数字はシンプルでいいんだ。

最近、メジャーの球場に年寄りが行かなくなってるらしいんだけど、それもデータがゴチャゴチャ出てくるからなんだと。「そんなものを観に来てるんじゃない。わしらはとんでもなく速い投球と、それを打ち返す打者のパワーを観に来てるんだ」ってね。

数字ばかりにとらわれてると、野球の本質、本来のおもしろさがどんどん失わていくよ。

取材・文/武松佑季