習近平を支えた「盟友」まで失脚

では、なぜ中国軍でこれほど大規模な粛清が続いているのか。習近平氏に反抗する軍人を排除しているだけなのだろうか? 上田氏は否定する。

「いえ、単純な“習近平派”対“反習近平派”では説明できません。その象徴が、張又侠氏です」

張氏は長年、習近平氏の盟友とみられてきた。2人の父親も親しい関係にあったとされ、張氏自身も習近平氏の軍改革を支えた中心人物のひとりだった。ところが、その張氏まで粛清の対象になったのだ。

習近平氏の盟友とされてきた張又侠氏。今年8月に国家中央軍事委員会を免職となった(写真/U.S. Marine Corps/Public Domain)
習近平氏の盟友とされてきた張又侠氏。今年8月に国家中央軍事委員会を免職となった(写真/U.S. Marine Corps/Public Domain)

さらに、失脚した苗華氏も、習近平氏が側近として重用していたとみられる人物だった。苗氏は海軍上将まで昇進した人物だが、もともとは陸軍の政治将校で、福建省での勤務が長かった。習近平氏との人脈を背景に出世した人物のひとりとみられてきたという。

「つまり、習近平氏に反抗してきた軍人だけが粛清されているわけではありません。習近平氏を支えてきた側の内部でも争いが起き、今度は互いを『腐敗している』『習近平氏への忠誠心が足りない』などと告発し、排除し合うようになっている。まさに、血で血を洗う軍内の権力闘争です。

苗華氏まで失脚したということは、習近平氏が自らつくってきた軍の人脈まで崩れ始めている可能性があります」

米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)の分析では、2022年時点で中国人民解放軍の最高階級である「上将」だった、あるいはその後上将となった47人のうち、2026年2月までに41人(87%)が粛清されたか、その可能性があるとされている。

2024年3月、北京の人民大会堂で開かれた全国人民代表大会に出席する習近平氏ら。中国人民解放軍では、その後も高級幹部の失脚が相次いでいる(写真/Shutterstock)
2024年3月、北京の人民大会堂で開かれた全国人民代表大会に出席する習近平氏ら。中国人民解放軍では、その後も高級幹部の失脚が相次いでいる(写真/Shutterstock)

これほど多くの高級軍人がいなくなれば、軍の指揮にも当然、影響は出るはずだ。