独裁には時に近すぎる関係がリスクとなる
独裁者になる方法を描いた『世界を統治する方法─独裁志望者のためのハンドブック(How to Rule the World: A Handbook for the Aspiring Dictator)』では、以下のような人を潜在的な敵として挙げています。
①あなたがトップに上り詰めるために蹴落とした人
②影響力はあるが、あなたを十分に助けてくれない人
③前のリーダーの友人や支持者
④現状に対して不健全な関心を抱いている人
⑤あなたに対して不誠実で信頼を置いていない人
⑥あなたの過去を知りすぎている人
これらの人に共通するのは、いずれ自らの決定を妨げ、統治を不安定にさせるリスクとなる可能性がある点です。
たとえば、北朝鮮では金正恩が権力を継承する前、さまざまな憶測が飛び交いました。日本にも訪れたことがある異母兄で金正日の長男の金正男がその座を継承するのではないかという噂もありました。最終的には、金正恩が父の後を襲いますが、金正男はマレーシアの空港で暗殺されます。
これは後述のように、権力継承問題が独裁者のアキレス腱となるためです。もし、現独裁者に代わる可能性がある者を生かしておけば、彼/彼女のもとに新しい勢力が結集し、独裁者が倒されてしまうかもしれません。
このことは、金正恩の後見人とも言われた叔父の張成沢にも言えます。彼は金正恩が父を継いでリーダーになることを支えた人物だと言われますが、その後、処刑されました。政権にとってなんらかの脅威に映ったのかもしれません。この手法は、父・金正日の時代にも異母弟の金平一に適用され、彼はハンガリーやポーランドなどの大使に「左遷」されたのでした。
キューバ革命を率いたカストロも同様です。彼が、1959年1月に任命した大臣21人のうち、12人が年内に辞任したか、罷免され、その翌年には追加で4人が罷免されました。さらに、カストロの盟友で国内でも人気があったゲバラも事実上の国外追放にあったとされます。
その後、ゲバラはボリビアの革命運動に従事して拘束されますが、彼を捕らえた将校は、彼がボリビアに来たのはカストロの決定によることを確認したそうです。ゲバラは革命を広めるために各地に赴いていたと思われることが多いですが、別の理由もあったのかもしれません。
文/大澤傑













