独裁は危機に生まれる
2000年代にジョージアで発生したバラ革命、ウクライナのオレンジ革命などから成る民主化運動「カラー革命」に際し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ロシアが米国や西側諸国から攻撃されているという主張を続けました。
この主張はNATO(北大西洋条約機構)を批判する際にも使用されました。結果、ロシアはこうした西側諸国の行動に対抗するためにウクライナに侵攻したと主張します。
また、「世界一クールな独裁者」と自称するエルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は、2022年3月、ギャング集団による大規模な殺人事件を受けて、非常事態宣言を発出しました。彼はギャングなどへの徹底的な取り締まりにより治安を改善させ、かつて世界最悪の水準にあった自国を「アメリカ大陸で最も安全な国」にしたと主張し、その後も強権的な統治を続けていま。
独裁は、どのようなときに生まれるのでしょうか。端的に言えば、人びとが不安に陥っているときです。先が見えない、自分の身の安全が心配だ……など、そういった空気が蔓延するなか、独裁者はすべてを解決するかのように現れます。
もともと、独裁は、戦争や疫病などが生じた際、それを迅速かつ強権的に乗り切るための知恵として生まれました。古代ローマ共和政に存在した「独裁官」がその淵源です。当時のローマの人びとは、この制度によって、2名選出されていた執政官の権力を1人に託し、効率的に事態に対処しようとしました。
歴史の水脈を辿れば、独裁がむしろ国家の安定性を保つために選択されてきたことがわかります。現代でも多くの国で緊急事態に直面した際に、リーダーの権限を一時的に拡大させる非常事態宣言などが整備されていることからも明らかです。
日本でも、新型コロナウィルスの蔓延に際して、国家の危機時に権限を内閣に集中させる緊急事態条項の議論が生じました。
しかし、危機に対処するために一時的に権力を拡大させる行為と、無制限に権力を集める独裁者は異なります。すべてとは言い切れませんが、前者が危機を克服するための手段としてある者が独裁を担うのに対し、後者は独裁者になるという目的のもと、ある者がそうした危機を利用するからでしょう(しかし、多くの独裁者は一時的な権力集中を謳いながら、長期の独裁を築いていきます)。
では、なぜ危機は、独裁者になるために利用可能なのでしょうか。













