「自治体間の競争」は制度が掲げた意義でもある

ふるさと納税で多額の寄附を獲得する自治体がある一方、寄附者が住む自治体からは住民税が流出する。

とりわけ都市部では税収流出額が大きくなり、行政サービスを受ける住民が、本来居住地に納めるはずだった税の一部を別の自治体へ移す現在の仕組みに疑問を呈する声もある。

この構造を泉佐野市はどう考えているのか。

市が強調するのは、そもそもふるさと納税には、地方と大都市との格差是正という目的があったという点だ。

「地方と大都市との格差是正、とりわけ首都圏(東京)へ一極集中する『税』を納税者の意思で移し替えるという目的がありました」

さらに市は、総務省が示してきたふるさと納税の意義の中にも、自治体が自らの取り組みをアピールし、寄附を呼びかけることで自治体間の競争が進むことが含まれていると指摘する。

「ルールの中で自治体同士が切磋琢磨し、磨き上げた返礼品を入口として地域の魅力を発信することは、今後自治体が主体的に特徴ある魅力的な施策を展開していく上で多くのヒントとなり、むしろプラス面が大きいと思います」

泉佐野市から見れば、自治体が知恵を絞って競争すること自体が、地方自治の力を高めることにつながるというわけだ。

ふるさと納税を活用したクラウドファンディングの建設費(約38億円)により、2026年7月23日に開業した「ヤッホーブルーイング大阪醸造所 よなよなビアライズ」(写真/泉佐野市提供)
ふるさと納税を活用したクラウドファンディングの建設費(約38億円)により、2026年7月23日に開業した「ヤッホーブルーイング大阪醸造所 よなよなビアライズ」(写真/泉佐野市提供)
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ただし、現在の制度に注文がないわけではない。むしろ泉佐野市が国に求めたのは、さらなる制度改正ではなく、頻繁なルール変更を止めることだった。

「毎年繰り返されるルール変更は一旦停止していただき、真の制度定着に向けて、今後は『ふるさと納税制度』を落ち着いて見守っていただきたいと考えております」

泉佐野市は、今後予定されている寄附募集費用や寄附金の活用、寄附者側の上限額などに関する制度変更にも言及する。

国との対立が表面化した2019年から約7年、最高裁判決から約6年。泉佐野市は再び全国で最も多くの寄附を集める自治体となった。その市が示すのは、返礼品競争そのものを否定する考えではない。

「ルールの中で競争する」「自治体自身が制度を理解して運用する」「返礼品を入口に地域との関係をつくる」。

そして国に対しては、制度を細かく縛り続けるのではなく、自治体に一定の裁量を残すことを求めている。

国との対立を経てもなお、泉佐野市が貫いているのは、ふるさと納税を単なる寄附集めではなく、「自治体が自ら考え、競争するための制度」と捉える姿勢なのだろう。

取材・文/集英社オンライン編集部