毎食フライドポテトだけの食生活、そして少年の腰椎は人より1個多かった

少年は、ほぼ毎日、油の多いフライドポテトだけを食べ続け、腸閉塞を起こして苦しみながら死にいたりました。栄養バランスが極端に偏った生活が原因だったことは間違いありませんが、もうひとつ不確定ながらも、この少年固有の事情もありました。

人間の腰椎(腰あたりにある背骨)は通常、5個あります。ところが、CTで腹部を撮影したところ、少年には6個の腰椎がありました。まれに腰椎が6個ある人はいますが、骨が1本多いということは、腹部のスペースが標準より広い可能性があったと考えられます。

要するに、普通の人よりもお腹がちょっと広い。けれども、小腸の長さは標準だったため、消化の悪いフライドポテトの過剰摂取で胃にガスがたまって膨らみ、余っている腹部の空間に小腸の端が入り込んで壊死した可能性もあります。

写真はイメージです
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CTと解剖だけでは、食生活と腰椎の因果関係を明言することまではできませんでしたが、私はおそらく無関係ではなかっただろうと考えています。

死亡診断書に病名の「腸閉塞」としか書くことはできませんでしたが、背景には1人親家庭の貧困や、福祉制度の取りこぼしが関係していることは明らかです。
少年に手を差し伸べられる大人が1人でも身近にいれば、と心から残念に思わずにはいられない解剖でした。

法医学教授が教えている 死体の授業
飯野守男
法医学教授が教えている 死体の授業
2026/5/26
1,870円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4868010579

「交通事故よりお風呂が危ない」
ドラマ監修も務める法医解剖医が教える
あっ! と驚く死体の話

解剖料は1回〇万円、医療ミスを暴いた解剖例など、
知られざる法医解剖医の仕事から、
「舌を噛んで自殺はあり得るのか?」
「刺されたらナイフは抜くべきか?」といった
ドラマやマンガで目にする描写のウソ・ホントまで。

法医学者だから知っている実際の解剖事例をもとに、思わず人に話したくなる
死体のリアルな知識がつまった1冊です!

■内容
第1章 解剖室へようこそ ――死体はこうして切り開かれる
死体はどのように解剖されていくのか
死体の「解剖料」はどこから、いくら払われるのか?
解剖が最も大変なのは「めった刺し」事件
刃物をもった人間に襲われたら「胸」と「首」を守れ
やわらかい臓器、固い臓器
高温多湿の日本でミイラ死体はできるのか
口の中にウジがびっしり詰まった腐敗死体
法医解剖医の解剖器具リスト

第2章 解剖しないとわからない 「死因」のケーススタディ
Case1「入れ歯で死ぬ」
Case2「風呂で死ぬ」
Case3「3食フライドポテトで死ぬ」
Case4「誤飲で死ぬ」
Case5「便秘で死ぬ」
Case6「病院嫌いで死ぬ」
Case7「鍼で死ぬ」
Case8「夫婦で死ぬ」
Case9「溶けて死ぬ」
Case10「山で死ぬ」

第3章 ドラマや漫画で描かれる「死体」の嘘
Q.「喉笛を掻っ切る」と本当に血が勢いよく吹き出るのか?
Q.舌を噛み切っての自殺は本当にできる?
Q.死体から目玉をくり抜けるか?
Q.「肺に穴が開いて、少しずつ窒息死するのが最も苦しい死に方」は本当?
Q.ナイフで刺された! すぐに抜くべき?
Q.銃で撃たれた! でも弾が貫通していれば、死ぬ可能性は低い?
Q.死体を隠すには、コンクリート詰めがいい?
Q.「重要な手がかりを握ったまま死んでいる」死体は実在するか?
Q.雷が落ちると、丸焦げになって死ぬ?

第4章 死体と向き合うことで見えてくる世界
『アンナチュラル』にハマって法医学を専攻、テレビ局に入社した卒業生
「死体は得意ですか?」「いいえ、苦手です」
医学部生だって解剖で倒れる
疑い深い人間ほど、法医学者に向いている
解剖は『答え合わせ』ができる
最短ルートで教授になりたい人は法医学が穴場?
死体の数が「解剖格差」に直結している日本
嬰児殺が多いインドネシアの法医学事情
死んだ肉体はどのように腐っていくのか
死体の腕を切る、人工呼吸器を外す、とことん合理的なオーストラリア
法医学者に完全犯罪は可能か?

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