親会社の広済堂HDの担当者は「9万円の料金は事業継続のため適正」
東京博善の親会社で広済堂HDの担当者に尋ねてみると、「相次ぐ値上げで、もうけ主義の経営にシフトしたわけではない」と言い切った。
担当者は、値上げの理由について「燃料費の高騰、施設メンテナンス、人件費の上昇などがあげられる」とし、「税金による補助がないので、9万円の料金は事業継続のため適正と言える」と説明した。
さらに「2023年3月期は赤字。2025年3月期は火葬取扱件数の増加に伴い、1億1700万の事業収益を出し、葬祭公益事業損失準備積立金に同額を計上しています」と続けた。
サーチャージ代を採り入れた理由はこう説明する。
「ロシアとウクライナの問題によって価格が高騰し、不安定な状況で、価格の見通しがつかなかったからです。ただ、葬儀社からの価格が定まらないのが困るといった意見を頂戴したことから、サーチャージ代を廃止しました。火葬事業の収益は親会社への配当には使われておらず、中国資本に流れているわけではありません」(同社担当者)
税金による補助をめぐっては、「区民葬儀制度」が23区で定められており、区民が制度を利用した場合、東京博善は約3万円を自社負担とし、利用者には5万9600円から案内していた。この制度は26年4月に廃止されることが決まっており、その後、利用者は8万7000円の料金案内となる予定だ。火葬料金を補助する新制度が26年度からスタートするものの、その補助額は現在も未定である。
区民から高まる不満の声を受け、東京都議会も議論を始めた。
立憲民主党などの会派は今年8月、「火葬料金引き下げプロジェクトチーム(PT)」を発足させた。9月に初会合を行い、東京都葬祭業協同組合の鳥居充理事長をヒアリングした。
鳥居氏は「民間の火葬場に頼らざるを得ない状況から火葬料金が高額になるため、公営火葬場を増設する必要がある」と訴えた。
とはいえ、火葬場の増設をめぐっては、住民の合意形成の難しさや、土地がないなどの状況から、「難易度は高めではないか」と業界関係者から声が漏れる。
火葬場への指導監督は、墓地埋葬法(墓埋法)などで各自治体が取り扱うと定められているものの、民間の火葬場の料金について言及されている条文はない。
小池百合子知事は、9月24日から10月9日に開かれた都議会第3回定例会の所信表明で、「東京全体で安定的な火葬体制を確保することは重要だ」と述べた。そして、国に指導が適切に行えるよう現行法の見直しを求めると言及した。
前出のプロジェクトリーダーの関口健太郎都議は、
「国としては、火葬料金の指導等は、現行法の運用で可能と考えているというのが現状です。都は、火葬場を指導監督する区市町村と連携し、料金を含む火葬場の経営管理に対する指導が適切に行えるよう、法の見直しを国に求めることが急がれます。実態を把握した上で火葬能力の強化に向けた取り組みを検討しなければいけない。法改正を求めて国が動かないなら都での条例化も検討すべきです」
とコメントした。
前出の東京博善の親会社で広済堂HDの担当者は「弊社でも都に全面協力をしていきます」と述べる。
都民が安心して火葬場を選択できる時代が来るのだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班













