東京都の火葬料金はなぜ高い?
東京23区内に住む40代の女性は、今年1月に87歳の父を亡くした。自宅の階段から落ちて打ち所が悪かったという。親族や父の友人などに訃報を伝え、葬儀会社との打ち合わせも行なった。ところが、火葬料金について、9万円はかかると言われ、あぜんとした。
「私の地元の愛知県では、火葬にはお金がかからないんです。これまでの経験で、かかっても1〜2万円程度だと思ってましたから。それがこの額を提案されて、思わずぼったくられているのではと勘繰りました」
火葬場は公共性が高いため、国の方針で戦後から自治体が運営すると定められている。40代の女性が話すように、ほとんどの自治体は火葬料金が無料だったり、費用がかかったとしても低価格だったりする。例えば、公営の火葬場であれば札幌市や静岡県浜松市は無料、大都市の大阪市では1万円、仙台市では9000円にとどまっている。
いっぽうで、東京都の23区で火葬をするには、8万円以上かかることがほとんどだ。
なぜここまでの価格差があるのか。背景には、東京23区に民間の火葬場が多いことがある。
23区には現在、9カ所の火葬場がある。うち、民間の火葬場は7カ所。東京博善(東京都港区)がうち6カ所(荒川区町屋、葛飾区四ツ木、品川区桐ヶ谷、渋谷区代々幡、杉並区堀ノ内、新宿区落合)を運営している。残りの1カ所は、板橋区に本社がある戸田葬祭場が運営。いずれも民間が取り扱っている火葬料金は8万円を超える。
23区内にわずか2カ所しかない公営の火葬料金は、4〜6万円程度だという。
ある葬祭業の関係者は、「23区内で亡くなった人の7割が東京博善の火葬場を利用している」と明かす。全国的には市区町村などによる運営が主流のところ、民間の東京博善がなぜここまで事業拡大できているのか。別の葬祭業の関係者がこう解説する。
「23区に民間が運営する火葬場が多いのは、明治期にコレラが流行し、遺体の火葬処理に近隣住民からの理解を得られなかったからです。そこで台頭したのが東京博善の前身の会社でした。同社は以降、寺院や火葬場の買収を行い、事業を拡大してきたのです」













