常に満床なほど人気の老人ホーム
事件の現場となったのは、東武東上線「若葉駅」から南西へ200メートルほどの位置にある5階建ての老人ホーム「若葉ナーシングホーム」。ホームページによると、2013年11月に開業し、入居定員は64人。鉄筋コンクリート造の建物で、1階はリハビリテーション室や浴室などがあり、2階以上は居室になる。
事件の通報があったのは15日の午前5時前のこと。老人ホームの職員が、5階の居室にいた施設利用者の目にあざがあるのを発見し、布団をめくると上半身に出血があったことを確認。4階の施設利用者からも出血が見られたことから、「女性2人が血を流している」と110番通報が入った。
警察官が現場に駆けつけると、4階と5階のそれぞれの部屋であおむけの状態で頭などから血を流している、入居者の上井アキ子さん(89)と小林登志子さん(89)が見つかった。二人は、刃物で複数回刺されているが、司法解剖の結果、小林さんの死因は首を圧迫されたことによる窒息とみられ、絞められたような痕もあった。
60代女性の近隣住民は「事件当日、朝6時ごろに起きたらパトカーが通り沿いに並んでいてただ事ではないと思いました」と明かす。
「ここは閑静な住宅街です。この街はシニア層が多いため老人ホームといったら若葉ナーシングホームというくらい知名度は高いです。あと値段も高いそうで、高級老人ホームとしても知られていて、常に満床なほど人気も高いと聞いています。
ナースさんも対応がとても丁寧で、職員がトラブルを抱えているなんて聞いたことがありません。セキュリティも厳しいようで、わたしも来客として行ったことがあるけれど、インターホンを押さないと1階のドアは開かないはずです」(同前)
また、近隣の小学校では運動会が開かれていて、事件を受けて、警察官が小学生に付き添う姿が目撃されている。
木村容疑者は事件発覚から数時間後の午前8時半ごろ、事件現場から250メートル離れた路上で、警察によって身柄を確保された。
関係のないことを言い出す木村容疑者
事件を受け、最寄りの警察署では捜査班を設置。50人超の捜査員が投入された。その後の調べで、木村容疑者は2023年5月から「若葉ナーシングホーム」で介護職として勤務しており、去年7月に自主退職していたことがわかっている。また殺された2人は容疑者が勤務していた当時も入所していたという。
「木村容疑者が犯行に及んだのは午前1時50分~2時5分ごろ。どこから来たかは分かりませんが、自転車で施設を訪れたのち、4桁の暗証番号を使い、1階の電子ロックを解除し侵入。事件当時は約1時間、施設内にとどまっていたとされています」(社会部記者)
一方で、木村容疑者は逮捕後、不審なそぶりを見せているという。
「木村容疑者は殺害された2人の名前を出して、事件への関与をほのめかしています。ただ、動機については一切答えず、関係のない内容を口に出したり、ニヤついたりするなど、挙動がおかしい面がある。
また、殺害された2人に対して『恨みはなかった』と供述しているが、ナイフを事前に購入したり、着替えの服などを用意したりしている。付近の防犯カメラにはフードをかぶったりマスクをしたりして顔を隠す姿が確認されている。計画性があり殺意もあったとみられている」
熊谷市内のアパートで独り暮らしをしていた木村容疑者だが、実家も埼玉県内にあった。父親は自ら会社を経営しており、祖父も地元の名士として知られていた。近隣住民は「特に家庭内トラブルなどもない、ただおとなしいかたなのか、息子さん(斗哉容疑者)はほとんど印象がない」と語った。
元職員が2人の入居者を殺害する“動機”は何だったのか。県警は16日、木村容疑者をさいたま地検に送検した。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班