気象庁でも導入を検討するAI予報。過去にない異常気象も予測できるのか?
あらゆる分野で発展し続けているAI技術。なんと天気予報にも応用され、すでにヨーロッパでは精度の高い予測を行っているそうだ。だが過去に例を見ないような異常気象などの予測もすべて可能なのだろうか? 果たしてAIに天気予報のすべてを任せることはできるのか?
書籍『天気予報はなぜ当たるようになったのか』より一部抜粋・再構成し、元気象庁長官の忖度なき思いを明らかにする。
天気予報はなぜ当たるようになったのか #4
AI予報でいいのか
今後、このAI予報がどこまで進化するかはわかりませんが、これまでの数値予報の進化のように、よりきめの細かい予報を、より正確に、そしてより先まで予報できるようになっていくと思います。日本の気象庁でもAI予報の導入が進められると思います。
気象の関係者なら、それでいいのか? と疑問を投げかけたくなるでしょう。
一般的にAIによる予測は、理由が示されないこと、過去に経験していないことは予測できないことなどが弱点とされているからです。予報の根拠を説明できなくなって困るのではないか、過去にないような異常気象は予測できないのではないかといったことが心配になるのです。
それに、これまで何百年も積み重ねてきた物理学やそれに根差す気象学が発展し、ようやく天気予報が当たるようになってきたのに、全部AIでできると言われると、ちょっと面白くありません。
しかし、天気予報の実用の場面では、それでいいのだ、というのが筆者の答えです。普通に生活したり、ビジネスをしたりする人にとっては、理由がどうかということよりも、まずは当たることが大事でしょう。
異常気象の問題も、70年以上のデータを用いて学習するので、それなりの異常気象はカバーしていますし、実際のAI予報のやり方や実績を見ていると、必ずしも過去にないような異常気象を予報できないとは言えないと思います。
写真はすべてイメージ 写真/Shutterstock
天気予報はなぜ当たるようになったのか
長谷川 直之
2025年6月6日発売
1,012円(税込)
新書判/256ページ
ISBN: 978-4-7976-8158-1
私たちの生活に欠かせない「天気予報」はどのように作られているのか?
気象の予測技術開発、国際協力業務、「線状降水帯」の情報発表などに取り組んできた
元気象庁長官の著者が、その舞台裏をわかりやすく解説する!
身近だけれど、実は知らないことだらけの「天気予報」のしくみがわかる!
2025年は、日本の気象業務のはじまりから150年の節目の年!
【内容紹介】
○「天気予報」の精度は上がり続けている! そのワケは?
○「降水短時間予報」は、ふたつのいいとこ取りの技術を使っている
○正しく知る「警戒レベル」と「防災気象情報」の意味
○手ごわい「線状降水帯」。予測の切り札は次世代衛星「ひまわり」
○「天気に国境はない」。気象データは無料・無制約で国際交換
○地球温暖化は本当かフェイクかと論じている場合ではない
○「AI予報」で気象庁はどうなる?
など