将来はどうなるのか
そうなると、将来の気候のことがますます心配になります。地球温暖化が進んだときにどのような気候になるのか、気候モデルを使った研究が進められ、その成果がIPCCの評価報告書に順次まとめられています。
最新の第6次評価報告書では、温室効果ガスの排出について5つの典型的なシナリオを設定し、それぞれのシナリオでどのような気候になるのかを予測しています。
それによれば、排出量が中程度以上の場合には今世紀中に地球平均の気温が19世紀末に比べて2度以上高くなる可能性が非常に高く、最も排出量が少なくなる場合であっても、1・5度をいったんは超える可能性があるとしています。
また、温暖化が進むと極端な高温、大雨、干ばつなどの頻度や強度が増すとしています。
最近は、それぞれの地域の気温や雨の降り方などがどうなるかを調べるため、地域気候モデルを使った研究も注目されており、IPCCの第6次評価報告書でも多くのページ数を割いて、地域の気候の予測についてまとめています。
日本の気候については、文部科学省と気象庁が協力して、これまでの気候の変化と合わせて、地域気候モデルを使った気候予測研究の成果をとりまとめた「日本の気候変動2025」を2025年3月に公表しました。2020年に公表された「日本の気候変動2020」の内容をさらに新しくしたものです。
「日本の気候変動2025」に記されている予測の内容をここで詳しく述べることはしませんが、ひと言で言えば、日本においても、温暖化とともに気温が上がり、災害をもたらすような激しい現象の頻度や強度が増し、その程度は、温暖化が進めば進むほど激しくなると予測されています。
たとえば、追加的な温暖化対策が取られず、世界の平均気温が工業化以前より4度高くなるシナリオでは、20世紀末に比べ、日本での平均的な猛暑日の年間日数は約18日増え、1時間に50ミリ以上の大雨の年間発生回数が約3・0倍に増え、海面が約68センチ上昇するなどとしています。また、温暖化とともに、台風の強度も増すと予測されています。
雨水の排水設備や河川の設備などは、何年に1回の大雨に耐えられるように、といった考え方で設計されることが多いです。長期間の雨量のデータを分析すると、たとえば、ある場所で100年に1回しか観測されないような日降水量は何ミリかということがわかるので、それを基準に施設の設計をするのです。
100年に1回という大雨に当たる日降水量は、4度上昇シナリオでは、工業化以前に比べ、全国平均で約32パーセント増えると予測されています。逆に、工業化以前に100年に1回であった極端な大雨(日降水量)は、21世紀末にはもっと頻繁に起こるようになり、100年に約5・3回の発生頻度になると予測されています。排水設備の設計などでは、こうした地球温暖化の影響を考えに入れなければならなくなっているのです。