温暖化をなるべく抑える

このような地球温暖化やその影響から暮らしや産業などを守るため、さまざまな地球温暖化対策が取られています。そのうち、二酸化炭素の排出を減らすなどして、なるべく温暖化が進まないようにする取り組みは緩和策とよばれています。また、温暖化した環境に暮らしや産業を合わせる取り組みは、適応策とよばれていて、どちらも重要な対策であり、相互に関係しています。

地球温暖化の緩和策の実施は容易なことではありません。それは、多くの人々の暮らしに直接影響し、産業の根幹に関わり、しかもお金や負担がかかるからです。

こまめに電気を消すくらいはまだいいのですが、二酸化炭素が出るから車に乗るなと言われると生活が不便になります。だからといって燃費のいいハイブリッド車などに買い替えるとお金がかかります。

企業にとっても、温暖化対策のために効率化や設備投資などを強いられることになります。さらに、二酸化炭素の問題は電力のあり方や価格とも直結していて、家計や産業に大きく影響を及ぼします。

最近では、温暖化を少しでも食い止めなければという人々の意識が共有されるようになり、対策のハードルも下がってきたと思います。また、たとえば車の燃費が良くなればガソリン代が安くなるといった効果もあり、対策を積極的に進める人も多くなりました。

企業にとっても、温暖化対策に後ろ向きでいると、投資家や顧客から背を向けられかねない時代になり、積極的に対策を講じるところが多くなってきています。

脱炭素の動きを好機ととらえた再生可能エネルギーや電気自動車・ハイブリッド車をはじめとするエネルギー効率のいい製品といったビジネスが進み、それらを目指した技術開発も盛んに行われるようになってきました。政府の補助金なども、こうした取り組みを後押ししています。

元気象庁長官が明かす猛暑と地球温暖化の本当の関係…もはや「地球温暖化は本当か」「フェイクか」などと論じている場合ではない_3
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このように、経済的にも見合い、技術的にも到達可能なレベルまでの緩和策は、今後も進んでいきそうです。しかし、工業化以前に比べて1・5〜2度以内の気温上昇に抑えるという、世界が目指している目標を達成するには、今、各国が見込んでいる対策では不十分です。


写真はすべてイメージです 写真/Shutterstock

天気予報はなぜ当たるようになったのか
長谷川 直之
天気予報はなぜ当たるようになったのか
2025年6月6日発売
1,012円(税込)
新書判/256ページ
ISBN: 978-4-7976-8158-1


私たちの生活に欠かせない「天気予報」はどのように作られているのか?
気象の予測技術開発、国際協力業務、「線状降水帯」の情報発表などに取り組んできた
元気象庁長官の著者が、その舞台裏をわかりやすく解説する!

身近だけれど、実は知らないことだらけの「天気予報」のしくみがわかる!
2025年は、日本の気象業務のはじまりから150年の節目の年!

【内容紹介】
○「天気予報」の精度は上がり続けている! そのワケは?
○「降水短時間予報」は、ふたつのいいとこ取りの技術を使っている
○正しく知る「警戒レベル」と「防災気象情報」の意味
○手ごわい「線状降水帯」。予測の切り札は次世代衛星「ひまわり」
○「天気に国境はない」。気象データは無料・無制約で国際交換
○地球温暖化は本当かフェイクかと論じている場合ではない
○「AI予報」で気象庁はどうなる?
など

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