K-1の精神を体現したアンディ・フグとピーター・アーツ

――角田さんといえば、選手、審判、競技統括プロデューサーとして長年K-1に携わってきたことでもおなじみです。

角田信朗(以下、同) K-1という大きなムーブメントがあったからこそ、今の自分があります。現在もこうしてお仕事をいただけているのも、K-1という看板があったおかげですね。

K-1って1〜2年先のブームではなくて、格闘技界の50〜100年先のことを考えていました。

「サッカーのワールドカップのような大会に育てる」という目標で取り組んでいたのですが、残念ながら1993年のスタートから20周年には届かず、19年で一旦消滅してしまいました。

角田信朗氏
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――K-1以降、PRIDEやRIZIN、BreakingDownなど、さまざまな格闘技イベントが誕生。K-1も体制を変えながら今も続いていますが、どう思われていますか?

今、現在の格闘技シーンを見ていると、背中に美術品を背負った兄ちゃん達が、記者会見で乱闘する。なかには違法薬物に手を染める輩もいますよね。

彼らのやっていることを全否定はしないけど、ああいうパフォーマンスを僕らが育ててきた「格闘技」という聖域と同じ括りで語ってほしくないな、というのが本音ではあります。

僕たちが目指し、ライバルだと思っているのはプロ野球やJリーグ。「メジャースポーツ」です。

そのメジャースポーツの絶対条件は競技人口だと思っています。競技人口につながらないものはメジャースポーツにはなり得ない。

では、競技人口につながるのってどんなスポーツか?と云ったら、「親が子供にやらせたいと思えるかどうか」それが絶対条件。

――確かに、憧れる選手がいれば自然と競技人口やファンも増えていくものです。

スポーツと暴力の紙一重の格闘技の世界に、「礼に始まり礼に終わる」という武道の精神を取り入れたのはK-1が最初だと思ってます。

それを体現したのがアンディ・フグやピーター・アーツでした。

どれだけ激しい戦いでも、終わればお互いに称え合い、礼をして終える……。

僕たちはこの精神を広めようとしてきたので、そこだけは引き継がれていってほしいですね。