港区ならではの「新しい小学校像」

一方で宮﨑校長は増加に伴っての課題も指摘する。

「学校の規模が年々大きくなる中で、学習面でも生活面でも、昨年度の活動と同じように実施しようとしても必ずしもうまくいかなくなりました。学校の規模に応じて教育活動の実施方法を毎年工夫する必要があります」(宮﨑直人校長、以下同)

小学校の新設は、なかなかないこと。イチから小学校を作るだけでも大変だが、そこに児童数の急増が加われば当然、「例年の繰り返し」ではいかなくなる。そんな中、同校はどんな取り組みをしているのか。宮﨑校長が続ける。

「本校は、開校以来、『地域とともにあり、地域に開かれた学校』を目指し、地域の方々との交流活動や地域の施設を活用した学習、企業と連携した教育活動を行なっています」

学校周辺にある施設と連携した授業はもちろんのこと、港区に所在地を置く東京ヤクルトスワローズの元選手などを招いた体育の授業や、同じく港区に本社があるTBSを招いた社会科の授業など、港区ならではのラインナップがずらりと並ぶ。

ボルダリングウォールなどの屋内施設も充実している
ボルダリングウォールなどの屋内施設も充実している

新しい小学校だからこそ、より一層、地域や周辺企業との連携を深めていく必要があると考えているのだろう。

タワマンに囲まれ、周辺にさまざまな施設が密集する中にある小学校は、これまでのような「住宅街の中の小学校」と同じようにはいかない。よって、新しい地域との連携や企業との連携を模索している途中だ。

PTA問題を解決する「はまさぽ」

また、地域との連携でいえば、「はまさぽ」(芝浜Kidsサポーターズ)と呼ばれる芝浜小学校のPTA団体も学校・地域からの依頼に応じる形で学校と地域をつなげる役割を果たしている。活動としては、地域でのお祭りや校内イベントの手伝いなどを行っている。

しかし、従来のPTA組織とは異なる点もある。「はまさぽ」会長の柳澤紀子氏が言う。

「『はまさぽ」は『できる人が、できるときに、できるる力を少しずつ』というコンセプトで、役員の強制なしで、学級代表などもありません。完全立候補の本部役員のみで運営しています。ご協力いただく保護者の皆様は、一切の強制なくご自分のご都合が合うときに選んで来ていただいています」

プールも屋内にあるなど、保護者が安心して通える環境が整っている
プールも屋内にあるなど、保護者が安心して通える環境が整っている
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さまざまな人が住み、人間関係のあり方も変わりつつある都市部では、これまでのように「強制参加」のPTAでは立ち行かなくなる。従来よりもゆるやかな組織にすることで、持続可能なPTAを目指しているのだ。

本記事で触れた港区の事例は極端な事例かもしれない。しかし、タワマンによる人口集中が今後も続いていくことを考えたとき、芝浜小学校の取り組みは今後の都市部での小学校のあり方に対して、1つの示唆を与えてくれるのではないだろうか。


取材・文/谷頭和希