買う前、買う時、買った後で分ける
3、とんかつ名店の「後味」
以前、私が行ったときは、食べ終わって店を出るときにサプライズがあった。帰り際(会計後)に「ブラックサンダー」というチョコレートをくれたのだ。
ちょっとしたことではあるが、粋な心配りで、また来ようという気になった。
この例でお伝えしたかったのは、サービスや商品には「先味」「中味」「後味」の3つがあって、プロはそれぞれの工程でお客さんを唸らせる仕掛けをしている、ということだ。
飲食店で言えば、店に入って食事が出てくるまでを「先味」、食事そのものが「中味」、食事が終わり店を出るまでが「後味」となる。
いいお店はこの3つの流れがしっかりと設計されていて、お客さんを最初から最後まで楽しませようという気づかいを感じる。
飲食業界に限らず、商品やサービスを提供する人であれば、お客さんが買う前にどんな感情を提供できるか、商品そのものでどんな体験を提供できるか、それを使ったあとにどんな気持ちにさせられるか、の3つに分けて考えることで、お客さんは待ち時間を含めて「楽しみやすい」し、結果、お店は「選ばれやすい」はずだ。
かの石田三成は豊臣秀吉に気に入られるために、一杯目のお茶はぬるめにして喉の渇きを癒し、二杯目は少し熱めにして落ち着いてもらい、三杯目は熱いお茶を少しだけ出して疲れを癒す、といった細かい配慮をしたという。
この話が史実かはわからないが、サービスを提供するときの「分け方」の参考になるだろう。
文/下地寛也
コクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタント エスケイブレイン代表1969年神戸市生まれ。1992年文房具・オフィス家具メーカーのコクヨに入社。5年後、コクヨがフリーアドレスを導入したことをきっかけに「働き方とオフィスのあり方」を提案する業務に従事し、ワークスタイルを調査、研究する面白さに取りつかれる。
顧客向け研修サービス、働き方改革コンサルティングサービスの企画など数多くのプロジェクトマネジメント業務に従事。未来の働き方を研究するワークスタイル研究所の所長などを経て、現在はコーポレートコミュニケーション室の室長としてコクヨグループのブランド戦略や組織風土改革の推進に取り組んでいる。
著書に『考える人のメモの技術』(ダイヤモンド社)、『プレゼンの語彙力』(KADOKAWA)、『一発OKが出る資料 簡単につくるコツ』(三笠書房)などがある。
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