崩壊する家庭を守りたかった
ーー虐待されたとき、お父さまは助けてくれなかったんですか。
遠野 父は大工の仕事をしていたんですけど、お酒好きで夜はあまり帰ってこなかったんです。私が母に何をされているのか知っていたのかな、というぐらいの距離感でしたね。夫婦げんかも絶えなかったですし。お金を持ってどっかに行っちゃうし。もう家庭崩壊ですね。
ーー助けを求めたい気持ちもなかったですか。
遠野 私は、家族を守りたかったんです。だから父のことも、どうしようもない人だけど、守りたかったし、私が間に入ることで、全員を守ってあげられるんだったら、それでいいと思っていたので。助けを求めたりなんかしたら、もっとばらばらになってしまうと思ったし。私さえ我慢すればという思いが強かったんだと思います。
ーー家庭が大変だと気付いたのは、いつぐらいでしたか。
遠野 小学校高学年になってからです。父と母が離婚して、母が再婚して。母は、私が子役だったので、その現場のスタッフの人と再婚しました。再婚して一番下の妹が生まれて、わりとすぐに母から「好きな人がいるの。私不倫してるの。ダブル不倫してるのよ」って打ち明けられて。そのあたりからこの環境はおかしいと気付き始めましたね。
ーーそんなこと、お母さまに言われるんですか。
遠野 どういうふうに不倫しているか、初めてのキスはどうしたかとか、いろいろ聞かされて。週に1回、母親がラブホテルに行く日があるんですよ。そういう母がいないときに限って、相手の奥さんが乗り込んでくるんです。
「いるんでしょ。隠さないで出てきなさい」って。だから私が「いません。ママはいません」って。下の子たちが怯えているから守らなきゃいけないし、(留守の間は)ご飯を食べさせなきゃいけないし。ちょっと地獄だなって思いました。