通販でハチミツやプロポリスを売り始めて大当たりしたんです
山田養蜂場は1948年、山田政雄氏が創業、全国の百貨店の物産展に出品して獲得した顧客を通信販売でリピーターとして囲い込む手法で成長した。ローヤルゼリーの研究にも成果をあげた政雄氏から1988年に経営を引き継いだ息子の英生氏は、さらに通信販売部門を強化してテレマーケティングセンターを開設し、東京や大阪に直営店を出店。
国内外の養蜂業者と提携を強化し、はちみつやローヤルゼリーに加え、プロポリスや化粧品、健康食品の分野にも参入。岡山の郡部発の全国ブランドとして、地元でも知られた存在だ。
創業者の代から付き合いのある近くの養蜂業者の男性はこう振り返る。
「政雄さんのころは、その辺の養蜂場と変わらない小さい養蜂場で、決まった数を店舗に卸したりするぐらいだった。でも人柄が良くて、養蜂の器具を一緒に買いに行ってくれたりしてました。山田養蜂場が今のように大きくなったのは英生さんのおかげですね。
北九州の大学を卒業してお父さんの仕事を助けるために帰ってきて、これからはネットの時代だっていうことで、通販でハチミツやプロポリスを売り始めて大当たりしたんです。職人気質の父親に比べて、英生さんはビジネスマンだったわけですね。当時は養蜂場なんて年寄りばかりでしたが、時代にあった経営をしてすごいって評判になりました」
一方で養蜂業者の枠を飛び越えた「活躍」に違和感を覚える同業者もいる。
「隣の津山市と合併せずに済んだのもあの会社のお陰というぐらい、鏡野町の経済を支えているのは事実だろうけど、地元ではあまりいい評判は聞かないですね。養蜂場なのにハチミツを買いに行く人は少ないんですよ。以前、山田養蜂場の従業員の方とお話しする機会があったけど、ハッキリと『うちはハチミツではなく健康食品と化粧品の会社です』って言ってたくらいで、もうハチミツへのこだわりがあまりないんです。営業担当は電話営業のノルマもあるとも聞いてるしね。先代の意志を継いでればもっといいハチミツを作れたのにと悔やんでいる方も多いですよ」(別の養蜂業者の女性)