地域に対する愛とチーム愛が、選手としての成長にもつながった
島田
サッカー、バスケ問わず、憲剛さんみたいな選手が増えてほしいなって思いますよ。私からひとつ聞きたいなって思っていたのが、選手のクラブや地域に対する愛情って、どう醸成されていくものなんですか?
中村
やっぱり地域の人たちと一緒につくってきたからこそ、愛情や想いが深くなっていくのかなと個人的には思います。地域に対する愛、そしてチーム愛。応援してくれるまわりの人たちのために、チームのために頑張ると思えたことが選手としての成長につながりました。今、若い選手はどんどん海外に挑戦しています。もちろん、チャレンジすることは素晴らしいことだと思います。その一方で、フロンターレにいても成長できることはあるんじゃないかと思い、僕は18年間プレーし続けました。もちろん、時代や自分の実力など色々な条件や理由はありましたが、僕の場合はその選択は結果的には良かったと思います。
島田
憲剛さんは海外のクラブからオファーがあっても、フロンターレに残りましたよね。Jリーグの他クラブにも行かなかった。練習参加から拾い上げてくれた恩があるかもしれないけど、その恩だけで18年間一筋ではやれないですよ。「愛」の源に何があるのかは、今回ぜひ教えていただきたいと思ったんです。
中村
シンプルにこのチームが「好き」。これに尽きます。チームメイトや監督をはじめとしたコーチングスタッフ、クラブスタッフや、日々を支えてくれるスタッフのみんな、そして共に戦うサポーターやスポンサーのみなさん。もう家族ですよね。この大好きなフロンターレを自分が強くしたい、タイトルを獲りたいという一心で18年間走ってきました。それと同時にサッカーだけじゃなくて、イベントや地域貢献活動も含めた活動も純粋に楽しかったんです。勝っても負けても、ファン、サポーターや地域の方が感情を共有してくれますから。ようは信頼できる仲間と一緒にやることだから、何をやるにしても楽しかったんです。
島田
すばらしい(笑)。ちょっとプライベートなこともおたずねしていいですか?
中村
え、急に(笑)? どうぞ、どうぞ。
島田
奥さまは中央大学サッカー部時代のマネージャーさんですよね。海外クラブからオファーが来た際とか、やっぱり相談されたのですか?
中村
本当にプライベートな話に(笑)。
いや、妻は「憲剛が決めたことに着いて行くよ」というスタンスですね。行きたかったら行けばいいし、フロンターレに残りたかったら残ればいいという感じです。人の感情って、往々にしてシチュエーションによって左右されるじゃないですか。でも、妻はいつもその左右に振れる僕の感情をちゃんと真ん中に戻してくれるんです。それは今もなんですけど(苦笑)。
島田
奥さまはまるでボランチですね。
中村
まさに。我が家の司令塔は妻です(笑)。
島田
選手がひとつのクラブに、それもトップレベルで18年間在籍するって、バスケの世界からしたらすごいことなんです。バスケはコートに5人しか立てませんし、選手が1~2名、入れ替わるだけで下位チームが優勝争いをすることもあります。つまり、より選手が(クラブを)動く可能性がある競技なんです。選手としてもどれだけ現役を続けられるかという問題もありますし、報酬を含めて現実を考えるのが一般的だと思うんですよね。そういった意味で憲剛さんが今、話をしてくれたことはとても参考になります。地域とのつながりとか、愛とか、うれしいキーワードをいっぱいいただけました(笑)。